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「ドラゴンクエストミュージアム」内覧会レポート!

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ヒカリエホール(東京・渋谷)にてドラゴンクエスト30周年を記念した「ドラゴンクエストミュージアム」が、7月24日より開催されている。本展ではこれまでの「ドラゴンクエスト」シリーズに登場する世界観に基づいた絵画・イラスト・模型や映像などのほか、制作資料などが展示される。2016年7月21日に行われた内覧会より本展の見どころをレポートする。

ドラゴンクエストとは

 「ドラゴンクエスト」シリーズは、1986年にエニックス(現:スクウェア・エニックス)より任天堂のファミリーコンピューター向け作品として発売されて以降、現在までにI〜Xまでシリーズ10作品と関連作品を擁する、日本を代表するロールプレイングゲームである。同シリーズはゲームに留まらず、アニメーションやマンガ・小説、舞台、実写映像のほか、作中の音楽のコンサートなど、幅広い展開が特徴的である。

ドラゴンクエストミュージアムとは

 「ドラゴンクエストミュージアム」は、ドラゴンクエスト30周年記念企画として開催される体験型ミュージアムであり、シリーズIからXまでを新しいコンセプトで展開している。作品に登場する装備の再現や絵画・ウォールアート・模型・ジオラマ・制作資料や発売時パッケージのほか、映像などによる表現や体験型のエンターテインメントにより作品の世界観を楽しむことができる。

展示の概要

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勇者の肖像 撮影=中村仁

 会場に入るとまず「ドラゴンクエスト」シリーズ各作品の主人公である勇者の肖像に出迎えられる。また、本展開催にあたり、シリーズのゲームデザイナー堀井雄二、キャラクターデザインの鳥山明、音楽のすぎやまこういちの三氏からのメッセージが掲示され、ドラゴンクエストⅣの間奏曲が流れるなか、発売時のパッケージが展示された「冒険の回廊」にて、オープニングシアターへの入場を待つこととなる。オープニングシアターでは本展示のオープニングムービーが上映される。

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伝説のロト装備 撮影=中村仁
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ロト伝説の画廊より「守護者」 撮影=中村仁

 最初のエリアは、ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ・Ⅲの世界観である「ロト伝説」をモチーフとした展示である。「ロト伝説」とは作品中における伝説の勇者「ロト」とその子孫をめぐる物語であり、「ドラゴンクエスト」シリーズを代表する物語となっている。このエリアでは現実の鍛冶職人が再現したロトの装備、作品中の数々のシーンの絵画による追体験やウォールアートが展示されている。ロト伝説はソフトの発売順とは違い、Ⅲ・Ⅰ・Ⅱという時系列であり、展示もその流れに沿っている。特に絵画による名シーンの再現は、かつてプレイしたシナリオを思い起こさせる。

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天空城 撮影=中村仁
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ジオラマ・ギャラリーより「花嫁はどっち?」 撮影=中村仁

 第2のエリアはドラゴンクエストⅣ・Ⅴ・Ⅵの「天空三部作」に関する展示である。これは、世界を治める「天空城」をめぐる物語であり、模型で再現された天空城や名場面をジオラマ模型が展示されている。この天空の城は撮影が可能であり、記念撮影なども行われる。ジオラマ作品は各作品の名場面を表現しており、さまざまな角度から見ることができる。Ⅴの名場面、主人公が2人のヒロイン、ビアンカとフローラから結婚相手を選ぶシーンも再現されている。

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動き出す冒険の記録 撮影=中村仁

 第3のエリアはドラゴンクエストⅦ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹの展示である。作品を映像で紹介する「動き出す冒険の記録」上映のほか、Ⅶに登場する「ふしぎな石版」のパズル「エデンの石版パズル」、Ⅷで導入されたテンションを体験するためのスクワットでテンションをためる「空と海と大地のスーパーハイテンション」、Ⅸに登場する「世界樹」の葉に願いを書き、祈りを捧げる「お祈り世界樹」、Ⅹのゲーム中の記念写真をユーザーから募集し、その優秀作を掲示した「旅のとびら・目覚めしアストルティア」など、体験型のエンターテインメントを楽しむことができる。前2エリアは展示が主体であったのに対し、このエリアは体験型が多いことが大きな特徴である。

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「伝説の始まり」より「ドラゴンクエスト」パッケージイラスト 撮影=中村仁
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「伝説の始まり」より制作資料 撮影=中村仁

 最後のエリアは、「ドラゴンクエスト」シリーズ全体を通じた展示である。2つに分かれており、前半は歴代の黒幕である魔王の肖像画のバトルシーン映像の上映だ。肖像画にはそれぞれの魔王の名セリフもあわせて展示される。後半は資料展示であり、パッケージデザインのほか、キャラクターデザインやマップ、楽譜など初期のドラゴンクエスト製作時の重要な資料がみられる。ここは唯一の資料展示エリアである。

 そのほか、「ファンアートコンテスト」の展示が行われており、一般から応募された作品の中から入選作品100点が展示されている。

「ドラゴンクエスト」シリーズが産む「ゲーム」原作の領域拡大

 「ドラゴンクエスト」シリーズにおいて、これまでも作品の実写化や再現は行われてきた。かつてゼネラルプロダクツから発売された「1/1ロトの剣」は、ゲーム作品に登場する代表的武器を実物大で制作し商品化した嚆矢である。また、1988年の『ドラゴンクエスト ファンタジア・ビデオ』は、ドラゴンクエストの世界観を実写映像化した珍しい作品であった。また、ゲーム音楽をもとにした交響組曲とそのコンサートなど、「ドラゴンクエスト」シリーズは早くから多くの実験的取組みを続けて、ゲームを原作とした領域の拡大を指向してきた作品であるといえる。また、「ドラゴンクエスト」シリーズを扱う展覧会としては、2011年に開催された「誕生25周年記念 ドラゴンクエスト展」以来、約5年ぶりの開催となった。

本展の特徴

 本展はシリーズ10作品を時期別に大きく3つに分けて展示をしており、過去の作品群はストーリー性の再現に、より新しい作品は体験に重きを置いているという特徴を有する。これはゲームという題材であること、世代によってどの作品を楽しんだかが分かれることへの対応であると感じた。展示や体験により30年間続いたシリーズ作品の一端に触れられる、重要な展覧会であるといえよう。

(文=中村仁)

PROFILE
なかむら・じん 日本経済大学大学院経営学研究科クリエイティブ産業研究所長・准教授。京都大学大学院法学研究科修了後、東京工業大学より博士(学術)授与。著書に「クリエイティブ産業論 ファッション・コンテンツ産業の日本型モデル」(慈学社)。

ドラゴンクエストミュージアム
会期:2016年7月24日~9月11日
会場:ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9階)
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1
開館時間:10:00~22:00(※入館は閉館の30分前まで)
休館日:なし
入館料(当日券):一般2800円/中高生2200円/4歳〜小学生1500円

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