夏のオアシス・軽井沢で前衛のエネルギーを体感する展覧会「SHOZO SHIMAMOTO EXHIBITION 嶋本昭三展 ─前衛の衝撃─」が、軽井沢ニューアートミュージアムで9月22日まで開催されている。「具体」の創立メンバーであり、生涯にわたり前衛芸術家として活躍した作家の日本初となる大規模な回顧展だ。
軽井沢ニューアートミュージアム
SHOZO SHIMAMOTO EXHIBITION 嶋本昭三展 ─前衛の衝撃─
東京駅から北陸新幹線で約1時間、都会の喧騒から離れた清々しい気候の軽井沢。この地に2012年にオープンした軽井沢ニューアートミュージアムは、その名の通り「新しい芸術」を紹介する美術館だ。現代美術に加えて浮世絵や書、マンガなども「ニューアート」の枠組みとして企画や収蔵を行っている。
現在、2階の企画展示室では「嶋本昭三展─前衛の衝撃─」が開催中だ。嶋本昭三は具体美術協会の結成メンバーであり、85年の生涯を前衛芸術家として生き抜いたアーティスト。国内での大規模な回顧展は今回が初となる。


館長の松橋英一は「嶋本は"誰もやったことのないこと"を実行した作家。絵具の入ったビンを巨大なキャンバスに投げる『ビン投げ』は、やがてクレーンや気球を使って行うまでに発展しました。そのほかスキンヘッドに絵を描いたり映像を投影する『ヘッドアート』、女性たちとの共作『女拓』、そして世界中のアーティストとのネットワークをつくる『メールアート』など数々の実験的な作品を国内外で発表しています。教師としての経歴もあり、平和活動や福祉活動も行うなど、つねに "アクション"を仕掛ける人でした」と話す。そのパワフルな作家の全貌が、映像資料とともに5つの展示室で構成されている。

1階にはミュージアムショップや本格的なイタリアンレストラン、ギャラリーなども併設され、1日中館内で楽しむことができる。また美術館としては珍しく、敷地内にはジャン=ミシェル・オトニエルの巨大なハートの彫刻を配した隈研吾設計のチャペルがあり、結婚式ができる施設を併設している。
緑豊かな軽井沢でエネルギッシュな作品に触れ、身も心もリフレッシュできる美術館に、この夏ぜひ訪れてほしい。
学芸員・由井はる奈さんに聞くみどころ
嶋本昭三作品の特徴に、多くの協力者の介在が挙げられます。彼は作品を通し「1人で行う表現には限りがある」ことを示した作家。その重要な活動のひとつに、作品を郵送し、その作品に手を加えて返送してもらう「メールアート」があります。年間60か国、8000通ほどのやり取りをしていた時期も。本展では嶋本の美術活動を引き継いだプロジェクトとして、海外のアーティストに参加を募り、集まったメールアートを展示しています。その数は現時点ですでに350通以上に及び、会期中も徐々に増えていきます。ここで気に入ったメールアートがあればその作家宛に手紙を書くことができます。ぜひこのメールアートに参加してください。


嶋本宛に明石市から届いたもの
佐藤恵美=文
(『美術手帖』2016年8月号より)
会場:軽井沢ニューアートミュージアム
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5
開館時間:7〜9月 10:00~18:00/4〜6月・10月 10:00〜17:00/11〜3月 10:00〜16:30
休館日:火(祝翌) ※8月無休
入館料:一般 1500円/高大生・65歳以上 1200円/小中生 700円/未就学児・障がい者 無料
URL:http://knam.jp