Quantcast
Channel: bitecho[ビテチョー]
Viewing all articles
Browse latest Browse all 939

高橋盾の思考を体感。UNDERCOVER25周年展レポート

$
0
0

日本を代表するファッションデザイナー、高橋盾。彼の手がけるブランド「UNDERCOVER」は2015年で25周年を迎えました。それを記念した回顧展「LABYRINTH OF UNDERCOVER」が、2015年10月10日〜12月23日、初台にある東京オペラシティ アートギャラリーで開催されました。国内外問わず評価の高いUNDECRCOVERのコレクションの魅力を、余すところなく表現した展示内容を紹介します。

まるで迷路のよう! 高橋盾が織りなすUNDERCOVERの世界観

「LABYRINTH OF UNDERCOVER」は、UNDERCOVERが美術館で行う初の展覧会。LABYRINTH=迷路の言葉通り、広い展示空間に、コレクションルックはもちろん、絵画、デザイン画、映像ブース、人形など、様々なクリエイションが並びました。

drape.JPG
1998 S/S「DRAPE」。本物のドレープと、ドレープをプリントした生地を組み合わせた、初期作品の中でもエレガントさを追求したコレクション

 1990年、高橋が文化服装学院在学中に立ち上げ、瞬く間に裏原系ブランドの代表として人気を集めたUNDERCOVER。その魅力のひとつは、音楽や絵画、現代美術など、他分野のカルチャーに影響を受け、それらが高橋の視点で、ファッションそのものやショーのストーリーラインに落とし込まれている点。展覧会のタイトルとなった「LABYRINTH」は、複雑に入り組みながらもひとつのコレクションを導いていく、高橋の迷路のような思考回路も表しているように感じられます。

hurt_01.jpg
2015-16 A/W「HURT」より

 例えば、こちらは2015-16 A/Wコレクションの「HURT」。その名の通り、切り裂かれたようなスリットや、粉々に砕け散ったガラス片が突き刺さったようなアイテムが登場しましたが、その時出演したモデルが一様に着用していたのがこの透明なマスクです。

 口角の上がったマスクをつけることで、モデルが不自然な笑いを浮かべているような不気味さが感じられるこの演出は、チェコの画家であるミヒャエル・ボレマンスの絵画《MombakkesⅡ》(透明のマスクをつけた人物を描いた作品、2007)にインスパイアされたもの。マスクに覆われた人物の顔は輝いているように見えますが、本当の表情はわからない......。その様子から様々なストーリーを想像させるコレクションになっています。

butbeautiful.JPG
2004-05 A/W「BUT BEAUTIFUL....」より

 次に紹介するのは、2004-05 A/W「BUT BEAUTIFUL....」。つぎはぎだらけの鳥の頭や、細かな手縫いのコラージュが印象的なこのコレクションには、フランスのぬいぐるみ作家、アン=ヴァレリー・デュポンが参加しています。アン=ヴァレリーは、ヴィンテージの布地をつなぎ合わせ、動物のぬいぐるみとして新たな命を吹き込む「テキスタイルの彫刻家」と呼ばれる作家。コレクション発表の前年に彼女の作品を見た高橋が、テキスタイルの縫合方法やそのイメージに共感し、このコラボレーションが実現したのだそう。コレクション当日は、アメリカのロックミュージシャン、パティ・スミスのポエトリー・リーディングが流されました。

「WE MAKE NOISE, NOT CLOTHES」

mertingpot.JPG
2000-01 A/W「MELTING POT」。ボタン、金具、裏地などの各パーツや、モデルのヘアメイクに至るまで、すべて特定のモチーフで統一している

 このように各カルチャーが融け合った奥深いコレクションを毎シーズン発表していることが、UNDERCOVERが圧倒的な支持を得るブランドたる所以であると改めて感じさせられる今回の展示。その根底には高橋の、音楽に対する造詣の深さがあるように思われます。

 学生時代、セックス・ピストルズのコピーバンド「東京セックスピストルズ」でボーカルを務めていたことがあり、ジョニー・ロットンに似ていることから「ジョニオ」というニックネームで呼ばれている高橋。UNDERCOVERのファッション自体は決してパンク路線ではありませんが、随所に散りばめられた「破壊」や「頽廃」といったモチーフは、パンク・ロックからの影響が強く出ているようにも感じられます。

prettyhatebird.jpg
2015 S/S「PRETTY HATE BIRD」。「けがれを知らない少女が強く自立した女性へと変化していく」というストーリーで描かれたショー。ファンタジックながら、後半登場するダークな雰囲気を帯びたドレスは、サイコスリラー映画『ブラック・スワン』を思わせる

 ボロボロの素材、髑髏、奇妙な人形などを通して伝わってくる毒気は、コレクションを一見したときに感じられる「可愛さ」「高貴さ」「ファンタジックさ」に複雑に絡み合います。それを見て思い出されるのが、展覧会場にも掲げられた高橋の言葉「WE MAKE NOISE, NOT CLOTHES(洋服つくってるんじゃなくて、ノイズつくってるんだよ)」。相反するイメージを混ぜることで生まれる歪さは、時に痛々しかったり、不気味だったりもしますが、「服」という形を超えて、見る人の心に確かに訴えかけるものになっています。それこそが、高橋の言う「ノイズ」なのかもしれません。

LABYRINTH OF UNDERCOVER "25 year retrospective"
会期:2015年10月10日〜12月23日(終了)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿 3-20-2
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11:00〜19:00(金・土は20:00まで/いずれも最終入場は閉館30分前)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
URL:https://www.operacity.jp/ag/exh181/

Viewing all articles
Browse latest Browse all 939

Trending Articles