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明日まで! 夢を与え、社会とつながる「メンヘラ展Dream」

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「メンヘラ」の当事者で、東京藝術大学に在学中のあおいうにが主催する「メンヘラ展 Dream」が、2016年1月23日〜2月3日、TAV GARELLY (東京・杉並区)にて開催されています。

 「精神疾患、精神障害を持つ人」を指す「メンヘラ」の当事者が、アートを通じて世界とつながることを目指す「メンヘラ展」。6回目となる「メンヘラ展 Dream」が、TAV GARELLY (東京・杉並区)にて、2016年1月23日〜2月3日に開催されています。

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主催のあおいうにによる絵画作品

 「メンヘラ展」主催のあおいうには、物質誘発性精神病性障害を抱える東京藝術大学油画科の学生。今回は、これまでよりもさらに表現として洗練された展示をすること、社会に夢を与えることをテーマに、双極性障害や抑うつを抱える作家など7名が出展しています。

 最終日となる2月3日には、3331 Arts Chiyoda統括ディレクターで東京藝術大学絵画科准教授の中村政人を迎え、トークイベントと講評会が予定されています。

メンヘラ展 Dream
会期:2016年1月20日~2月3日
会場:TAV GALLERY
住所:東京都杉並区阿佐谷北1-31-2
電話番号:03-3330-6881
開館時間:11:00~20:00
休廊日:木休
URL:http://tavgallery.com/dream/
トークイベント / 講評会 あおいうに × 中村政人「メンヘラと美術教育について」
日時:2016年2月3日18:00〜20:00
入場料:無料

竹中工務店ギャラリーにてフィンランドの伝統装飾ヒンメリの展示

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竹中工務店東京本店1階にあるギャラリーエークワッド(東陽町)にて、2月3日〜2月17日、フィンランドの伝統的な装飾品ヒンメリを紹介する展覧会「Eija Koski HIMMELI ーエイヤ・コスキ フィンランドの祈りー」が開催されます。フィンランドの伝統装飾・ヒンメリの作家であるエイヤ・コスキの作品60点に加え、彼女の暮らすフィンランド西海岸の農園風景の写真やヒンメリ制作の映像なども展示。会期中には作家本人によるワークショップのほか、北欧の雑貨などを販売する北欧マーケットの開催が予定されています。

 2016年2月3日〜17日、竹中工務店東京本店1階にあるギャラリーエークワッドでは、フィンランドの伝統装飾ヒンメリの作品を紹介する展覧会「Eija Koski HIMMELI ーエイヤ・コスキ フィンランドの祈りー」を開催します。ヒンメリ作家であるエイヤ・コスキの作品約60点、また彼女が暮らすフィンランドの農園風景の写真やヒンメリの制作工程を紹介する映像などが展示されます。

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エイヤ・コスキのヒンメリ作品

 かつてフィンランドでは、太陽神の誕生祭や農耕神への収穫祭を12月下旬の冬至に行っていました。「ヨウル(Joulu)の祭」と呼ばれる冬至の行事の伝統的な装飾品が、ヒンメリです。1150年頃に田園地方からはじまったもので、各家庭で手作りのヒンメリを食卓の上の天井に吊しました。ヒンメリの語源はスウェーデン語の「天」を意味し、人々は翌年の豊穣をヒンメリに祈り、太陽の復活を待ちわびました。またヒンメリには、死者の霊から家を守る護符としての意味合いもあったようです。

 エイヤ・コスキは、そうしたヒンメリの伝統と歴史を踏まえながらも、現代的な感性で作品性の高いヒンメリを制作し、展覧会や著書で発表しています。彼女は経済学者としてのキャリアを捨て、フィンランド西海岸の自然豊かな農園で暮らし、自ら育てたライ麦の藁でヒンメリ作品を制作します。きのこと野生のハーブの専門家でもあるエイヤは、ヒンメリ作品だけでなく、そのライフスタイルでも、多くの人の共感を獲得しています。今回の展覧会では、会期中にエイヤによるワークショップなども開催します。

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エイヤ・コスキのヒンメリ作品
Eija Koski HIMMELI ーエイヤ・コスキ フィンランドの祈りー
会期:2016年2月3日~2月17日
会場:ギャラリーエークワッド
住所:東京都江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1階
電話番号:03-6660-6011(ギャラリーエークワッド事務局)
開館時間:10:00~18:00 ※最終日は17:00まで
休館日:日曜・祝日
入館料:無料
URL:http://www.a-quad.jp/

会期中に下記のイベントを開催します。

【関連イベント】トークショーとフィンランドの民族楽器カンテレ演奏の夕べ
日時:2016年2月4日
トークショー:18:00〜19:00
カンテレ演奏:19:15〜19:30(演奏者桑島実穂さん)
パネラー:エイヤ・コスキ(ヒンメリアーティスト)、ウッラ・キンヌネン(フィンランドセンター 文化・コミュニケーション担当マネージャー)
会場:竹中工務店東京本店2階Aホール
定員:先着100名
参加費:無料
申込方法:右記URLの申込フォームよりお申し込みください。(http://www.a-quad.jp
※会終了後、懇親会を兼ねてワインパーティを予定。

【関連イベント】ワークショップ 「ヒンメリをつくろう 」
日時:2016年 2月6日 10:00〜13:00
講師:エイヤ・コスキ(ヒンメリアーティスト)
会場:竹中工務店東京本店1階打合せコーナー
住所:東京都江東区新砂1-1-1
対象年齢:中学生以上
定員:30名
参加費:1,000 円(材料費込) ※麦は北海道遠軽町産の麦わらを使用します。
申込方法:右記URLの申込フォームよりお申し込みください。(http://www.a-quad.jp

【関連企画】フィンランドの暮らしの雑貨マーケット
会期中、フィンランドの暮らしに関する雑貨を販売するマーケットを開催致します。詳細はギャラリーHPにて。
開催予定日:2016年2月3日〜2月17日 ※2月7日、11日、14日は休み
URL:http://www.a-quad.jp

黒瀬陽平が見た、震災と高校生を描くF/T15『ブルーシート』

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2013年、東日本大震災で崩落しブルーシートで覆われていた崖を臨む、高校のグラウンドで上演された演劇作品『ブルーシート』。飴屋法水が作・演出を務めた本作には、舞台となった福島県立いわき総合高校の生徒10人(当時)が出演し、話題を呼びました。15年秋に開催された「フェスティバル/トーキョー 15」に際し、東京・豊島区の元中学校を会場として再演が実現。元生徒を含む高校生たちのやりとりを通して震災を描いたこの作品を、美術家、美術評論家の黒瀬陽平が語ります。

「後」の時間の演劇 黒瀬陽平=評

 1955年5月11日の午前6時56分、濃霧につつまれた瀬戸内海上で、宇高連絡船「紫雲丸」が貨物船と衝突し、沈没した。「国鉄戦後五大事故」のひとつに数えられる紫雲丸事故である。168名もの犠牲者を出したこの事故は世間に衝撃を与え、当時まだ構想段階だった「本州四国連絡橋計画」、つまり瀬戸大橋建設を推進するきっかけにもなった。

 何よりも世間の人々の心を痛めたのは、沈没した紫雲丸に、修学旅行中だった小中学生が乗っていたということだ。事故によって犠牲になった修学旅行関係者は108名、うち100名は修学旅行を楽しむ児童たちだった。突然海に投げ出された児童たちのうち、泳ぎが苦手な子たちから犠牲になった。紫雲丸事故がきっかけとなって、全国の小中学校に水泳プールの設置が進められ、水泳の授業が採用されるようになったという。

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紫雲丸沈没事故 出典=『戦後20年写真集』(共同通信社)

 最近、ぼくはとあるプロジェクトを準備するなかで、紫雲丸事故について調べることになった。ぼくは高知生まれで、高校卒業まで高知で育った。だから、紫雲丸事故について深くは知らなかったものの、まったく縁がないというわけでもなかった。というのも、高知市内の中学高校の教諭であった母がかつて勤務していた高知市立南海中学校の3年生117名が、1955年5月11日の紫雲丸に乗船していただからだ。117名のうち、28名が帰らぬ人となった。

 母に連絡し、南海中学校の校長先生にアポイントを取ってもらい、数名のアーティストとともに南海中学校を訪ねることにした。プロジェクトのリサーチで、実親に段取りをしてもらうというのも不思議な感覚だ。ちなみに父親は、宇高連絡船の中にあったうどん屋がとても美味しく、その店は大阪万博にも出店したのだ、という話をしていた(真偽は確認していない)。

 校門のすぐそばに、紫雲丸事故の記念碑がある。この記念碑の前で追悼式典がおこなわれる様子を、地元のテレビニュースで見た記憶が蘇る。記念碑の近くに、なにやらミニチュアの潜水艦のようなものが置いてあった。こちらは見たことがない。近づいてよく見ると、「津波避難シェルター『救難まんぼう』」と書いてある。どうやら先の震災を受けて、津波避難学習の一環として導入したものらしい。6人乗りの小さな津波避難艇だ。海がすぐ近くにある南海中学校にとって、津波はもっともリアリティのある災害のひとつである。

 校舎に入ると、ちょうど休み時間だったのか、生徒たちが勢いよく廊下を走っていった。ぼくたちは、教室のひとつを改装した「紫雲丸遭難事故学習資料展示室」という部屋に案内された。そこでは、紫雲丸事故についてのパネル展示や、遺族の方々からのメッセージ、生徒たちでつくったジオラマなどが展示されていた。それらひとつひとつが、事故の記憶の継承のかたちとして胸をうつものだった。

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フェスティバル/トーキョー 15での『ブルーシート』公演の様子 撮影=武田陽介

 ある小さな記事の前で立ち止まった。「行くはずだった修学旅行」と題されたその記事は、事故から49年後の2004年5月11日に、事故から助かった南海中の同期生39名が、事故で中座してしまった修学旅行を、およそ半世紀ぶりに「やり直す」ために出発したことを伝えていた。しかも、同期生たちは亡くなったクラスメイトたちの遺影を持参し、バスに乗って京都へ向かったのだ。

 記事には、49年前の見学予定地だった三十三間堂を見学する同期生たちの写真があった。もちろん両手には、クラスメイトの遺影が抱えられている。そこには、中学生のままのクラスメイトとともに京都見学をする、初老の「修学旅行生」たちの姿があった。

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フェスティバル/トーキョー 15での『ブルーシート』公演の様子 撮影=武田陽介

 世界には、理不尽な事故や災害がある。生き残った当事者たちは、その「後」の時間(木村敏が「ポスト・フェストゥム」と呼んだような時間)を生きなければならない。その事故や災害を境に変わってしまったこと、取りかえしのつかないことを受けとめて、「後」の時間を生きてゆく。

 紫雲丸事故のエピソードはぼくに、当事者にとっての「後」の時間について、そして「後」の時間のなかに訪れた、ひとつの区切りについて、考えさせるものだった。「後」の時間は、決して「前」の時間と同じにはならない。「渦中」をさかのぼって、もとどおりになることはない。

 しかし、「前」の時間から失われてしまったものが、別のかたちをとって、「後」の時間に合流してくることは、きっとあるだろう。紫雲丸事故の生存者たちのように、「後」の時間を生きるひとたちが、失われてしまったものを記憶し、思い出しつづける限りにおいて。

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フェスティバル/トーキョー 15での『ブルーシート』公演の様子 撮影=武田陽介

 2013年1月末に福島県立いわき総合高等学校で発表された『ブルーシート』の初演は、「渦中」の時間に属する演劇であったと言うべきだろう。震災の当事者である10人の高校生たちが、被災した自分たちの高校のグラウンドで、そのほとんどがアドリブではないかと思われるようなやりとりをする(実際は、台本の9割は飴屋法水による創作だという)。そこで話されること、身振り、手振り、すべてが、震災のメタファーとして現れてしまう。それがどんな些細で、たわいのない高校生のおしゃべりだったとしても、震災と無関係に見ることが不可能であるような状態。それこそが、「渦中」の時間である。

 一方、再演された『ブルーシート』は、まさに「後」の時間に属する演劇だった。かつて「渦中」の時間を演じた高校生たちは高校生ではなくなり、人によってはいわきからも移住し、そのうちのひとりは、家族をもったことによって出演することができなかった。いわきではなく、東京の廃校のグラウンドで、彼ら彼女らは、2013年と同じ演技を繰り返す。しかしそれは、「渦中」の時間はすでに過ぎ去ってしまったのだということ、ぼくたちは「後」の時間を生きるしかないのだ、ということを突きつけるのである。

 ぼくは、その演出が不満だった。起こってしまったことは取り返しがつかず、過ぎ去った時間は戻らない。そんなことはとっくにわかっている。悲しいほどに、わからされている。「前」の時間と、「渦中」の時間と、「後」の時間、それらの差異、どうしようもないズレ、不可逆な時間を強調するだけの演出を、ぼくは受け入れることができなかった。

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フェスティバル/トーキョー 15での『ブルーシート』公演の様子 撮影=武田陽介

 「後」の時間を生きるとは、失われてしまった「前」の時間や「渦中」の時間にあったことの、「何を忘れないか」を決めることであり、それを「どのように記憶し続けるか」「どのように思い出すのか」を考えることである。たしかに、再演された『ブルーシート』では、過去は反復され、記憶され、思い出されていたかもしれない。しかしその反復や想起は、彼ら彼女らが成長し、場所を変え、時間が経ったとしても、いつまでも、どこまでも追いかけてくる悪夢のような「渦中」の時間であるように見えた。

 その悪夢を断ち切るためには、失われてしまったものが「いつか別のかたちで帰ってくるとしたらどのようなかたちがありうるか」、を想像するしかない。もちろん、その想像力を、まだ若すぎる彼ら彼女らに求めるのは無茶なことだ。紫雲丸事故の生存者たちでさえ、半世紀もかかったのである。

 しかし、現在の彼ら彼女らの想像力に寄り添い、悪夢のように襲ってくる「渦中」の時間の反復のただなかで生きる姿しか描くことができないのであれば、それは悪い意味でドキュメンタリーに過ぎないのではないか。当事者ではない演出家だからこそ、当事者にはない想像力を重ねあわせることができるのではないか。

 彼ら彼女らのもとにいつか、失われてしまったものが別のかたちで帰ってくるとしたら、どのようなかたちがありうるだろうか。もし、そのような想像力がないのなら、芸術が「後」の時間を扱う意味はない。

(文=黒瀬陽平)

PROFILE
くろせ・ようへい 1983年生まれ。美術家、美術評論家。ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。2010年にアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に『破滅*ラウンジ』(2010年)、『カオス*イグザイル』(F/T11主催作品、2011年)、『キャラクラッシュ!』(2014年)、『カオス*ラウンジ新芸術祭2015「市街劇 怒りの日」』(2015年)など。著書に『情報社会の情念』(NHK出版、2013年)。

ブルーシート
会期:2015年11月14日~15日、12月4日〜6日(終了)
場所:豊島区 旧第十中学校 グラウンド
作・演出:飴屋法水
出演:福島県立いわき総合高等学校 卒業生、ほか
制作:precog、フェスティバル/トーキョー

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アーティストのための「清島アパート」利用者募集2月15日まで

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 NPO法人 BEPPU PROJECTでは、アーティストの居住・制作の場として活用している「清島アパート」(大分・別府)の2016年度利用者募集を行っています。募集期間は2016年1月15日〜2月15日。利用者は月額1万円で、アトリエと居住可能なプライベートルームの2部屋が利用できます。居住可能期間は、2016年4月4日~2017年3月31日で、 アーティストやクリエーターが利用対象となっています。

 NPO法人 BEPPU PROJECTが運営するアーティストやクリエーターのための「清島アパート」は、2016年1月15日〜2月15日の期間、2016年度利用者を募集します。大分県別府市にある「清島アパート」は、アーティストやクリエーターのための居住制作スペースとして、利用者同士が切磋琢磨し成長する場を提供し、多くの優れたアーティストやクリエーターを輩出することを目標に運営してきました。

 今回の募集の利用期間は2016年4月4日~2017年3月31日の約1年間。対象者はジャンルや国籍問わず、表現活動、制作活動をしているアーティストやクリエーターです。月額1万円で、1階のアトリエ兼プレゼンテーションルームと居住可能な2階のプライベートルームを利用できます。

 近年の別府市は「混浴温泉世界」ベップ・アート・マンスなど、さまざまなアートイベントを通じて「アートのまち」としての認知が高まりつつあり、今まで以上に、利用者と運営団体、そして地域の人々との交流、連携を通して、日常生活の中での芸術の可能性を探り、芸術文化を発信しくことを目指しています。

 応募の詳細は、NPO法人BEPPU PROJECTのウェブサイトをご覧ください。

清島アパート2016年度利用者募集
応募期間:2016年1月15日(金)~2月15日(月) 必着(郵送でのみ受け付けます)
問合せ先:NPO法人BEPPU PROJECT
所在地:大分県別府市野口元町2-35 菅建材ビル2階
電話番号:0977-22-3560
営業時間:9:00~18:00(平日)
URL:http://www.beppuproject.com/

ミヤギフトシ連載03:滝口悠生の小説に見る、記憶と物語。

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アーティストのミヤギフトシによるブックレビュー連載。第3回は、先頃、「死んでいない者」で第154回芥川賞を受賞した小説家・滝口悠生の『愛と人生』。映画『男はつらいよ』の舞台であり、この小説でも描かれる東京・柴又を歩きながら、作家の想像力に迫ります。

滝口悠生『愛と人生』──読むこと、思い出すこと ミヤギフトシ

 12月30日、年の瀬の晴れた暖かい日。金町線という聞き覚えのない路線に乗り換え、柴又駅で降りる。改札内に踏切があって少し驚いた。駅を出ると観光客数人が寅さん像の前で記念写真を撮っていた。

 にぎわいをみせる短い表参道を通るとすぐ目の前に現れた帝釈天は、正月準備で少し浮ついているものの、人は思ったほど多くない。帝釈天の裏側は普通の住宅地で、寅さん記念館に向かう人々がまばらに歩いていた。

 しばらくすると現れる、思っていた以上に広い江戸川の河川敷。サッカーの練習をする少年たち、凧を落としてばかりの女の子、正月には駐車場代わりになるのか、芝生の上で石灰のライン引きを押す老人たち。

 滝口悠生の小説『愛と人生』(講談社)によれば、寅さんが柴又に帰ってくるときはたいてい駅ではなく、この河川敷を金町方面からやってくる。目の前の風景が、読んだ小説の記憶と重なり、離れ、不思議な気分になる。もしかしたら、ずっと前にも現実に同じ風景を見なかったか......。

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柴又駅側の路地 撮影=ミヤギフトシ
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帝釈天の境内 撮影=ミヤギフトシ

 『愛と人生』は映画『男はつらいよ 寅次郎物語』(山田洋次監督、1987年)に登場した少年、秀吉が成長し、共演した美保純と一緒に旅をする様子を描く。映画において、秀吉の父親は死の間際、自分が死んだら寅さんのところへ行け、と息子に言い残す。電車を乗り継いで秀吉は福島から柴又の「とらや」にたどり着き、そこで美保純演じる印刷屋の娘に出会う。

 美保純(小説内では、役名の「あけみ」ではなく常に美保純と呼ばれている)は秀吉をからかいながらその身を案じ、秀吉も少しずつ懐いていく。ほどなく、秀吉は帰ってきた寅さんと蒸発した母親探しの旅に出る。そして道中、高熱を出して寝込んでしまう。旅館の隣の部屋に泊まっていた秋吉久美子演じる隆子が騒ぎを聞きつけ、熱にうなされる秀吉を看病する。医者に夫婦だと勘違いされた寅さんと隆子は、互いをとうさん、かあさんと呼びはじめる。

 でも、三人が一緒にいられたのは、ほんのわずかな間。そんななか秀吉は、美保純のことを考えていたのだろうか。それは、誰も知りえない。

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江戸川の河川敷 撮影=ミヤギフトシ
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江戸川の河川敷 撮影=ミヤギフトシ

 それから27年後、『愛と人生』において、秀吉は美保純と再会する。寅さんを演じた渥美清は死んでしまい、秀吉も美保純も年を重ね、ふたりは伊豆の温泉宿に泊まり、ときに『男はつらいよ』の登場人物として、ときに役者として、ときにふたりの人間として、いろんなことを思い出したり、思い出せなかったりしている。

 思い出したくない人であれ、思い出したい人であれ、手をあわせれば勝手に思われてくる。死んだ父親の顔をもはや私ははっきり思い出せないが、死者を思うのは顔を思い浮かべることではなくて、思い出している今この瞬間にいろんな感情が訪れては去り、訪れては去るその落ち着かない状態にだけあって、手を離せばまた記憶だとか思い出だとか指し示そうな存在になってしまう。 滝口悠生『愛と人生』(講談社、2015)

 先日発表された新作『死んでいない者』(『文藝春秋』)は、大往生した男の孫やひ孫たちを含んだ家族や親戚、友人たちが集まった通夜にまつわる群像劇。引きこもりの青年が弾き語る懐かしい歌。銭湯で湯あたりを起こして倒れてしまう外国人の娘婿。誰もいない台所でひとり酒を飲み続け倒れてしまう子供。夜通し寝ずの番をしながら酒を飲み交わし、うとうとする大人たち。ここでも、たくさんの登場人物たちが、たくさんのことを忘れたり思い出したりしている。

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江戸川の土手からスカイツリーを望む 撮影=ミヤギフトシ

 それを読んで、自らの祖母の通夜を思い出した。すっかり疎遠になってしまった実家に帰り、兄やいとこたちと缶ビールを飲み交わしながら、寝ずの番をした夜。「彼女は?」というお決まりの質問に、どう返事したのかも思い出せない。ケース1箱分のビールを4人で消費したところで気分がよくなって、深夜、近所をひとり歩く。

 角を曲がるとコンクリート工場があって、裏手には砂山がふたつ、こんもりと盛り上がっている。子供の頃から変わらないように見える風景。背中からばたりと砂山の斜面に倒れ、大の字になる。ずずず、と砂と一緒に少し体が下がる。真冬だったから、沖縄でもジャケット1枚では寒い。星が綺麗で遠くから波の音すら聞こえてくるような気がした。いつも見えていたオリオン座が、その夜も綺麗に見えていたはず。

 いくつもの嫌な思い出の集積でできているような島の記憶が、悲しくも穏やかな気分のなか、酔いとともに思い出される。明日は二日酔いだろう。そういえば、初めて酒を飲んで酔いつぶれた次の日にやんわりと注意したのも、祖母だった。祖母独自の判断で訪ねてきた僕の友人を追い払ったり招き入れたりするので、同級生からは怖がられていた。よく作ってくれたターンム田楽が好きだった。

 島の生活も良かったかもしれない、とふと思ったところで自分の記憶の都合良さにひとり笑った。これからも、忘れそうな、忘れた、もしくは忘れたという事実も忘れたことについて思いを巡らせながら、過去と折り合いをつけていくのだろうか。

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江戸川、矢切の渡し付近 撮影=ミヤギフトシ

 滝口悠生作品を読み、触れたと思ったら手元から離れてゆく記憶の流れに触れるたびに、自らの記憶、もしくは意識が物語と一緒に漂い始めるような感覚を覚える。物語世界に入り込むのではなく、自分の意識と物語が、ぼんやりと重なったり離れたりしている。そのうつろい、あたらしい物語が生まれるかもしれない可能性に身を委ねることは、とても豊かで心地よい。

 『愛と人生』の最後あたり、美保純が羽織っていた黄色いカーディガンがささやかな奇跡を起こす。その黄色は、映画『寅次郎物語』で、高熱で死にそうになっていた秀吉が目にしたかりそめの「かあちゃん」のカーディガンの色でもあり、秀吉と美保純が体験するはずのない別の映画のたなびく「黄色」でもあったりする。それらが、思い出すという行為のなかで交わり、物語を生む。

 祖母の葬式の帰り、空港でポケットの底に砂がたまっていることに気づく。海? こんな冬に?と考えてすぐに思い当たる。でも、指先にじゃりじゃりとした感覚はたしかに島の夏、海辺で起きたさまざまなことを思い起こさせた。いろんな風景が、頭の中に広がって、薄れていった。

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柴又八幡神社境内にて 撮影=ミヤギフトシ
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寅さん記念館側の猫 撮影=ミヤギフトシ

PROFILE
みやぎ・ふとし 1981年沖縄県生まれ。XYZ collectiveディレクター。生まれ故郷である沖縄の政治的・社会的問題と、自身のセクシャリティーを交錯させながら、映像、写真などを組み合わせたインスタレーションによって詩的な物語を立ち上げるアートプロジェクト「American Boyfriend」を展開。「日産アートアワード2015」ではファイナリストに選出。現在、丸亀市現代美術館での「愛すべき世界」に参加している(2016年3月27日まで)。 http://fmiyagi.com

愛と人生
著者:滝口悠生
出版社:講談社
判型:四六変型
ページ数:240ページ
刊行:2015年1月14日
価格:1,700円(税別)

子供も大人も同じ器で楽しめる、「やさしい器」作家インタビュー

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「子供にも、ご高齢の方にも、手の少し不自由な方にも使いやすい器」と聞いて、どんな器をイメージしますか? 今回紹介するのは、奈良県吉野郡川上村で制作をしている陶芸家・鈴木雄一郎さんの「やさしい器」シリーズ。それは身近な人を思いやる優しい気持ちと、食卓を楽しみたいという強い思いから生まれた、驚くほどシンプルで美しい器です。さて、どうしてこの器はいろんな人にとって使いやすく、食卓に並ぶ姿が愛おしいのでしょう? さっそく鈴木雄一郎さんに話を聞きました。

みんなが同じ器を使える、という幸せについて

 普段は意識もしないことが、自分の置かれる状況によって突如「困難なこと」に変わってしまうことがあります。あるいは「子供だから」「高齢だから」という理由で、使えるものを制限されてしまうことがあります。

 たとえば病院での食事や学校の給食には、アルミやプラスチックの食器がよく使われます。それは落としても簡単には壊れませんし、汚れが落ちやすく、軽くて誰が扱っても「安心」だからです。それは合理的な選択だと思います。ですが、それは不自由を抱えている人や子供、ご老人のお世話をする人々にとっての勝手の良さであって、残念ながら使う当人たちにとっての心地よさとは無関係です。

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病院食や学校給食では利便性の面からプラスチックの器などが使用される
出典:aliexpress.com http://www.aliexpress.com/price/restaurants-supplies_price.html

 様々な人が生活する学校や病院などの食事では困難だとしても、家族で食卓を囲む時に、ひとりだけが他の人と違う簡易なお皿で食事をとることになったら、ちょっと淋しい気がします。子供だって、器に工夫があれば、大人と同じ食器で上手に食事をとることもできるかもしれません。

 今回は「家族みんな同じ器で食事をとれることは、食事以上に強力な心の栄養になる」ということを教えてくれる、奈良県川上村の陶芸家・鈴木雄一郎さんにインタビューしました。

思いやる気持ちから生まれた「やさしい器」

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陶芸家・鈴木雄一郎さん。川上村の「匠の聚(たくみのむら)」に構えた鈴木夫婦のアトリエで

──鈴木さんの「やさしい器」シリーズはなにをきっかけに生まれたのでしょうか?

 今から5年前になりますが、同じく陶芸家である妻が脳の病気により手から足まで片麻痺になった時期が長く続いたんです。利き腕の方には麻痺がありませんでしたが、それでも入院した当初は軽くて落ちても割れないものがよいとプラスチックのマグカップを渡していました。

 ただ、病院では毎日の食事の器もプラスチック製だったので、「せめてマグカップだけでも」と自分がつくった器を持っていったんです。それでお茶を飲んだ妻が「あぁ、この器で飲んだら美味しいわぁ!」と言ってくれたことをよく覚えています。心から嬉しそうな表情をしたんですよ、やっぱり器が持つ力はすごい、とこの出来事で再確認できました。

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ともに陶芸家である鈴木さん夫婦。匠ののアトリエにて

 妻がリハビリの病院に移ってからは、道具がうまく使えない方にもたくさん出会いました。
退院後しばらくしてから、入院中に使っていたマグカップの話になり、器の魅力を語り合ううちにイメージが膨らんで、「道具をうまく使えない人にも喜んでもらえる器をつくってみよう!」と、お箸が持てなくても掬って食べられる器をつくり出したのが「やさしい器」のはじまりです。

──とてもシンプルなデザインなので、最初は機能として掬いやすさに特化されていることに気が付きませんでした。

 パッと見て、いかにも不自由な方のためにデザインしているとわかられるのは嫌だったんです。その食器を使うことで不自由さをさらに意識させることになりますし、手先が不自由な人もそうじゃない人も同じように使えるシンプルなものを、と考えました。

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子供でも上手に救い上げることができる「やさしい器」。サイズも様々な展開がある

──いかにもバリアフリーというデザインではなく、さりげないユニバーサルデザインが施されていることに感動しました。「やさしい器」の食べ物の掬いやすさはどうやって実現されたのでしょうか?

 「やさしい器」の代表的なアイテムでは、器の口縁の下を内側に入れ込むことでスプーンで掬いやすく、こぼしにくい構造にしています。また、どれもリムがある形ですのでしっかりと手を添えやすいのです。

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写真手前:鈴木雄一郎さんの「やさしい器」シリーズ。リムがあることで持ちやすく、掬いやすい
写真奥:妻の鈴木智子さんの陶器は凛としたフォルムが清々しい

 言われないとわからないほどのちょっとした工夫なのですが、こうすることで子供から大人まで、様々な人たちにとって食事をとりやすくなります。

──鈴木さんのそういったデザイン面での観点は、大学時代に陶芸ではなくデザインを専攻されていたことが関係しているのでは?

 そうですね。陶芸の道を突き詰めていくなかで、デザインを学んでいた大学時代の気付きは重要です。大学時代はデザインの勉強よりも自分なりに様々な表現で作品づくりに取り組み、素材をいじり、試し続けた4年間でした。

 ただ、ひとつひとつ作品をカタチにできても、どうも自分が取り組んでいる表現に実感が湧かず、モヤモヤしていたんです。その頃に自分の思いを形にするには発想力を活かすための知識・技量・素材そのものの力が必要だと痛感しました。

──陶芸を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

 たまたまテレビで陶芸の番組がやっていて、電動轆轤(ろくろ)の上の土の塊が気持ちよく伸び、自由に形が変化していき器になっていく様子を観て「あっ、これ触りたい」という純粋な気持ちが湧いたのが始まりです。ただ、そのときは「土を知りたい!」をいう思いが強く、窯元で1年くらい学んでみようくらいの気楽な気持ちでした。

 それがいざ身を置いてみると形をつくることさえままならず、土のこと、釉薬のこと、窯のこと、そのほか何から何まで知らないことばかり。今まで自分は広く浅く様々な素材を触っていただけで、ほとんどを学べていなかったことに気付いたんです。

 同時に、陶芸に対する「あぁ、これは一筋縄ではいかないな」という思いと、イメージするところから焼き上げまで一貫して関われる楽しさにも気付き、陶芸の道を突き詰めていきたいと思いました。

芸術家が集う「匠の聚(たくみのむら)」での優しいインスピレーションに触れる生活

 鈴木さん夫婦が生活し作陶しているのは、奈良県吉野郡川上村にある「匠の聚(たくみのむら)」と呼ばれるユニークな施設です。様々な作家が、この森の中のアトリエ兼住居に定住し、創作活動を行っています。川上村は吉野川の水源に恵まれ、吉野杉の産地でもある雄大な自然のなかに生きる村。もともと都会で育った鈴木さん夫婦に、村での創作活動について聞いています。

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匠の聚(たくみのむら)の様子。ここに現在陶芸・日本画・彫刻・木工・イラストレーターなど8組の作家が住まい、創作活動をしている

──「匠の聚」に移住したきっかけについて教えてください。

 結婚当初から将来は独立して陶芸家として生きていきたい、と妻と話をしていたんです。そんななかで偶然その年の新聞の記事で芸術家が集う「匠の聚」への入居募集を見つけました。応募してみたところ、嬉しいことに選んでいただいたことがはじまりです。

──住み慣れた都会生活からの川上村への移住は、ちょっと思い切りが必要そうに思います。

 夫婦ともに街で生まれ育ちましたので、その便利さも良く知っています。街にあるものがここにはないです。でも街にないものがここにある、と考えてみると暮らしや生き方も変わってくると思います。

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静かな山中のこのアトリエには、近隣の美術大学の学生や地域の住人などが気軽に訪れる開かれた場所でもある

 はじめは環境の変化に伴う様々な不安がありましたが、当時は子供もおらず夫婦ともに20代、妻の「きっとなんとかなるよ」の言葉で心の不安が希望に変わり、また創作の場を与えてもらえる喜びも大きく、移住を決めました。

 都会と川上村での生活のどちらが優れてるという比較はできないです。それぞれのスタイルに合った暮らし方を考えてみることが大切だと今は思っています。

──匠の聚での作陶生活は鈴木さんにどんな変化をもたらしたのでしょう?

 匠の聚にきてから17年が経ちますが、ここでの暮らしから得た「心の成長」はじっくりと器の形に現れてきていると感じています。

 春、新緑に期待を膨らませ、夏、ヒグラシの声に始まりと終わりを感じ、秋の散歩で実りを見つけ、冬、静かに力を蓄える。そんな風に1年1年を過ごして行くうちに、時間に追われ自分を見失うことが減りました。

 「今を大切に感じられる心」が自分の中に育ったことがここに来てからの大きな変化だと思います。「やさしい器」シリーズが生まれた背景にも、自分自身のそういった変化があります。

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鈴木さんの目に映る、川上村の四季の移ろい
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柔らかい陽の当たる縁側で。ここに座布団をひいて娘さんたちと一緒にお茶を飲むことも。 

器が繋ぐ、幸福な食卓の風景

──器は食事の必需品ですが、食卓の「楽しみ」としての器についてどうお考えですか?

 食卓は、お料理を食べたりお茶をするとき、友人や家族とお話をするとき、しずかにひとりで過ごすときなどそのときどきで姿を変えますよね。使う器もそのシチュエーションや、気分、一緒に食卓を囲む人の違いによると思います。

 食卓での時間はひとりの時でも多くを囲んでも、心が和らぐ時間です。その分だけ、お気に入りの器があれば使う喜びや楽しみも大きくなるのではないでしょうか。

──そういった寛ぎの食卓をつくりだしているのは、温かみのある器に盛られた食事なのかもしれません。「やさしい器」は、その温かさを食卓を囲む人全てがシェアできるような器だと感じました。

 そうですね。私のなかの制作への一つひとつのこだわりが、少し手が不自由な方や小さな子供が器を使う喜びとなり、前を向いて進めるような自信につながれば嬉しいです。

 すべての人に使いやすいと感じてもらう器をつくるのは難しいかもしれません。ですが、身近な人たちを勇気づけることができて、その輪が広がっていくことで、私の制作も意味のあるものになるのではと感じています。

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家族みんなが同じ器を使って食卓を囲むことができる

PROFILE
すずき・ゆういちろう 1969年 神奈川県生まれ。東京芸術大学 デザイン科卒。妻の鈴木智子と共にいにま陶房を主宰。主な展示に、東京 南青山spiral内/spiral marketでの企画展、東京 世田谷/IN MY BASKETでの企画展、奈良 高畑町/空櫁での企画展がある。クラフトフェアまつもと、灯しびとの集い、工房からの風など、野外クラフトイベントにも参加。

いにま陶房(匠の聚)
住所:奈良県吉野郡川上村大字東川135
電話番号:0746-53-2660
URL:http://www5.kcn.ne.jp/~inima/index.html

大切な家族のためや、お祝いなどにも選びたい「やさしい器」。ぜひチェックしてみてください!

滋賀でアール・ブリュットを考える国際フォーラムと展覧会開催

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2016年2月5日、6日の2日間、大津プリンスホテルのコンベンションホール淡海にて、アール・ブリュットに関する有識者や 実践者による講演及びシンポジウムを行う「アール・ブリュット国際フォーラム」が開催されます。また、同会場にて2月5日〜7日、「images展 ─アール・ブリュット、芸術の地平を開く─」が同時開催されます。

 滋賀の大津プリンスホテルで2016年2月5日、6日の2日間、「アール・ブリュット国際フォーラム2016」と「images展 -アール・ブリュット、芸術の地平を開く-」が開催されます。「アール・ブリュット(仏:Art Brut)」とは、「生の芸術」という意味のフランス語です。正規の美術教育を受けていない人々が生み出す、既存の枠組みに縛られない絵画や彫刻などの創作のことを指します。

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アール・ブリュット国際フォーラム チラシ画像

 今回が一回目の開催となる「アール・ブリュット国際フォーラム」は、オーストリアやスウェーデンから有識者や実践者が来日し、アール・ブリュットに関する活動や近年の動向について公演やシンポジウムを行い、その魅力や意義について考えます。

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過去の展示風景 撮影=大西暢夫

 2月5日〜7日に同時開催される「images展 -アール・ブリュット、芸術の地平を開く-」では、18人の日本人作家の作品に加え、オーストリアの「グギング芸術家の家」や、精神病院で制作された作品を展示するスウェーデンの「メンタルケア美術館」などからの作品も展示します。約250点もの作品が展示される本展を通して、現在、そしてこれからのアール・ブリュットを見渡すことができるでしょう。

アール・ブリュット国際フォーラム2016 〜世界の現場から
日時:2016年2月5日 15:30〜18:00、6日 11:40〜18:50(時間は下記プログラム参照)
会場:大津プリンスホテル コンベンションホール淡海
住所:滋賀県大津市におの浜4-7-7
電話番号:0748-46-8100(アール・ブリュット魅力発信事業実行委員会事務局)
参加費:無料
URL:http://www.no-ma.jp/?p=12586

プログラム:
■5日「アール・ブリュット国際フォーラム 2016 〜世界の現場から(1)」
15:30~16:40 特別報告1:私たちが取り組む専門家と連携した造形活動教育について(スウェーデン)
 ヨハン・ソルセル(ヘグウィク特別支援学校副校長)
16:00〜18:00 パネルディスカッション:アール・ブリュット作品の調査から見える風景
 山本和弘(栃木県立美術館シニア・キュレーター)
 渡辺亜由美(滋賀県立近代美術館学芸員)
 はたよしこ(ボーダレス・アートミュージアム NO-MA アート・ディレクター)
 進行:藁戸さゆみ(ボーダレス・アートミュージアム NO-MA 学芸員)
■6日「アール・ブリュット国際フォーラム 2016 〜世界の現場から(2)」
11:40~12:50 パネルディスカッション:障害者の文化芸術活動を世界に発信!
 小倉和夫(日本財団パラリンピックサポートセンター理事長)
 松下功(東京藝術大学副学長)
 岡部大介(外務省大臣官房文化交流・海外広報課長)
 進行:岡山慶子(朝日エル会長)
13:00〜14:10 特別報告2:マリア・グギング国立神経科病院の芸術家たち(オーストリア)
 ヨハン・ハイラッハー(グギング代表、精神科医)
14:10〜15:10 講演:アール・ブリュットという言葉が必要な理由~世界の美術館の動向から~
 保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)
15:20〜16:30 特別報告3:アトリエイヌティにおける造形活動の取り組み(スウェーデン)
 エヴァ・オルフソン(アトリエイヌティ代表)
16:30〜17:40 特別報告4:『セルフ+アート・エキシビション・セラピー』の取り組みから(タイ)
 ジュンポン・チナプラパート(芸術療法家)
17:40〜18:50 特別報告5:メンタルケア美術館の取り組み(スウェーデン)
 マリー・リンネスティグ(メンタルケア美術館館長)

※上記プログラムのほか、2月5日〜7日の期間「厚生労働省 障害者の芸術活動支援モデル事業実践報告会」「アール・ブリュットネットワークフォーラム2016 ~2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて~」も同会場にて開催されます。

images展 -アール・ブリュット、芸術の地平を開く-
会期:2016年2月5日〜7日
会場:大津プリンスホテル コンベンションホール淡海
開館時間:2月5日、6日 9:00~21:00/7日 9:00~14:00
観覧料:500円
URL:http://www.no-ma.jp/?p=12586

資生堂アートエッグ入選、川久保ジョイなど3作家の個展2月より

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東京・銀座の資生堂ギャラリーは、新進アーティストを応援する公募プログラムとして、「shiseido art egg」を毎年開催しています。第10回目となる本年度、370組の応募から選出された新鋭作家は川久保ジョイ(かわくぼ・じょい)、GABOMI.(がぼみ)、七搦綾乃(ななからげ・あやの)の3名。2月から4月にかけて、それぞれの個展が同ギャラリーにて開催されます。

 資生堂ギャラリーは、1919年のオープン以来「新しい美の発見と創造」という考えのもと、東京・銀座の地で100年近く活動を続けています。「shiseido art egg」は、活動の一環として新進アーティストにギャラリーの門戸を広く開くことを目的とした公募制のプログラムです。

 全国各地から370の展覧会プランが集まり、20代〜30代の応募が全体の80%を占めたという今回(第10回)は、川久保ジョイ、GABOMI.、七搦綾乃の3名が入選となりました。2016年2月〜4月の3か月間、銀座の資生堂ギャラリーにて3名の個展を順に開催していきます。

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GABOMI. CHIMNEY 2015 ジークレープリント 1303x803cm

 川久保ジョイは、1979年・スペイン生まれのアーティストです。写真、映像、光や音などを用いて世界をとらえるインスタレーションを制作しています。2011年の震災以降は、福島の放射線量の高い地域にフィルムを埋め、原子力の影響を可視化した写真などを発表しています。2016年2月3日〜26日に開催する個展では、銀座という場の歴史を参照しつつ、ギリシャ神話を題材に現代社会のあり様に迫る作品を発表します。

 GABOMI.は1978年・高知生まれの写真家です。2008年に独学で写真を学び始めたという彼女は、自身が考案した、身体の一部である手をカメラのボディと組み合わせ、手で光を調節することで、カメラレンズへの依存から解放されたイメージをつくる「TELENS(手レンズ)」という手法で作品制作に取り組んでいます。デジタル画像加工は一切行わず、写真撮影の前提を問いながら、写真表現の新たな可能性を追求しています。GABOMI.の個展会期は3月2日〜25日です。

 七搦綾乃は1987年・鹿児島生まれの彫刻家です。主に自然物をテーマにした木彫作品を制作し、着色をほとんど施さず、木の素材感を大切にした表現が特徴で、ありのままに自然を受けとめ、その変化の中に美を見出しています。3月30日〜4月22日に開催する個展では、枯れゆく植物をモチーフにした新作やドローイングを通して、「私たちが普段見過ごしがちなものたちと遭遇できる空間」の実現を目指します。

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七搦綾乃 rainbows edge 2015 樟 114x70x40cm

 3名の展覧会終了後には、そのなかから「shiseido art egg 賞」が選出されます。今年度の審査員は写真家・石川直樹、美術家・小沢剛、小説家・藤野可織の3名。受賞者は5月下旬に「shiseido art egg」ウェブサイト上で発表されます。

「第10回 shiseido art egg」展
会期:
川久保ジョイ展 2016年2月3日~2月26日
GABOMI.展 2016年3月2日〜3月25日
七搦綾乃展 2016年3月30日〜4月22日
会場:資生堂ギャラリー
住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
電話番号:03-3572-3901(資生堂ギャラリー)
開館時間:平日11:00~19:00、日曜・祝祭日11:00~18:00
休館日:月曜日
入場料:無料
URL:https://www.shiseidogroup.jp/gallery/artegg/

作家によるギャラリートーク
開催日時:
川久保ジョイ 2016年2月6日 14:00〜14:30
GABOMI. 2016年3月5日 14:00〜14:30
七搦綾乃 2016年4月2日 14:00〜14:30
会場:資生堂ギャラリー
お問合せ:03-3572-3901(資生堂ギャラリー)

絵筆でたどる、キュリー夫人の人生 片山真妃インタビュー

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2016年1月9日〜2月7日、Maki Fine Arts(東京・神楽坂)にて、片山真妃の個展「キュリー夫人年表」が開催されています。「VOCA展2014」にも選出された片山は、特定の人物をモチーフとした抽象画などで知られます。個展に際し、作品や制作の背景について聞きました。

──今回の個展「キュリー夫人年表」で展示されている作品は、マリー・キュリー(キュリー夫人)や彼女をとりまく人々をテーマとした絵画が中心となっています。まずは、特定の人物をモチーフとする抽象画を、どのように制作されているのか聞かせてください。

 この「誕生日と命日」シリーズは、自分でつくったカラーチャートをもとに、モチーフとする人物が生まれた日と亡くなった日の日付、曜日、天候を色に置き換えて構成したものです。外側の四角形が誕生日、中央の四角形は命日を示し、4つに区切られた領域のそれぞれが日付を表す4桁の数字、領域を囲む枠はその日の曜日にあたります。天候によって各色の色調が決まります。

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Maki Fine Artsでの展示風景

 曜日を色に置き換えるという発想は、タイに留学していたときの経験がもとになっています。タイでは各曜日に色が割り振られており、例えば月曜日は「現・タイ国王の誕生曜日 」とされていて、毎週月曜日は街中みんなが黄色の服を着るんです。日本では血液型を聞くように、タイでは生まれた曜日を尋ねられることもよくありました。

 また、天候は、記憶に深く結びつくものなのではないかと思い、要素としました。ある出来事を思い出すときに「あの日は雨が降っていて寒かったな」ということがきっかけとなったりしますよね。

 《MarieCurie-Sklodowska(Madame Curie)18671107-19340704》は、最下層に誕生日と命日を描いた上に、年代順に伝記から抽出した言葉を書いたり、彼女の人生で重要な出来事が起こった日付を先のルールに従って描いたりと、何層にも重ねています。まずは伝記を読みながら鍵となりそうな言葉を抽出してノートに書き出し、年表をつくってから制作しました。

──伝記を読んでキュリー夫人の人生をたどることから始まり、日付をピックアップしたり、言葉を書き留めたりと、絵画作品を描くまでに膨大なリサーチを経ているのですね。

 そうですね。キュリー夫人の作品をつくろうと決めてから、2年くらいかかりました。とくに天気のデータ集めは、気象関係の仕事をしている弟と過去の気象データの復元を研究されている方からアドバイスをもらいながら、海外のデータベースを調べたり、気象庁の図書館で古い資料を探したりと、大変でした。ポーランドの地方のデータはあまり残っていなかったりして......。

 ただ、早く描きたいという気持ちもありましたが、リサーチは楽しかった。キュリー夫人の次女であるエーヴ・キュリーが書いた伝記『キュリー夫人伝』(河野万里子訳、白水社)がとても面白かったし、調べるほどに彼女たちがリアルに感じられるようになっていくんです。

 例えば、キュリー夫人の夫・ピエール・キュリーは1906年4月19日、パリの濡れた路面に足を滑らせて転倒したところに馬車が通りかかり轢かれて亡くなります。伝記には「相変わらず雨が降り続いて〜」というように天候についての記述があります。実際に気象データと見比べたところ、確かに当日、前日、前々日とまとまった降水量が観測されていることがわかり、パリの街の足元は大変悪かったのだろうな、と想像しました。

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リサーチの資料、伝記から抜き出した言葉を書き留めたノート、ドローイング。「『キュリー夫人伝』は本当に面白いから、展示を見てくれた人にも読んでみてほしい」

──今回、キュリー夫人を取り上げようと思った理由をお聞かせください。

 女性の人生をテーマとしたいと思っていたこともあるのですが、キュリー夫人の肖像写真を見て、影のある表情が気になったことが大きなきっかけです。

 例えばアインシュタインは、肖像画からも自他ともに認める「天才」の自信が感じられるけど......キュリー夫人も、大発見をして社会的に高く評価されていた人物なはずなのに、写真はとても暗い顔をしている。それが印象的で。

 実際に伝記を読んでみても、ネガティブで自分に厳しい性格の人だと感じました。マリーはパリで勉強する姉ブローニャに仕送りをするために住込みの家庭教師を18歳から6年間します。そして姉・ブローニャがパリで医者になり、いよいよマリーはパリで勉強できるという姉妹の約束は果たされるのですが、マリーははじめ「次はあなたがフランスへ来て勉強する番です、パリへいらっしゃい」という姉の誘いに「私なんかばかだし、今もばかだし、...パリを夢見ていた望みはもう消えてしまったのです」とパリ行きを躊躇するのです(笑)。

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夫婦など二人の人物について絵画を制作し、画面同士を衝突させて絵具を交換する「衝突シリーズ」

──「誕生日と命日」シリーズは必然的に亡くなった人をモチーフにすることになりますよね。今はこの世に存在しない人物の生涯をたどるような制作プロセスは、その人の人生を絵の生成とともに「生き直す」ような行為とも言えそうです。制作中は、どのような感覚なのでしょうか。

 同じ時間を共有して、育てていく感じです。作品と一心同体になる感覚があります。また、不思議と描く対象と自分自身がリンクするように感じることもあります。

 例えばキュリー夫人は、11トンのピッチブレンド(閃ウラン鉱)を溶かして分離精製する作業を4年間続けて、1グラムの純粋ラジウム塩の精製に成功します。要素を積層させていきながら、ひとつの作品に結晶させる自分の制作過程も、彼女の実験のプロセスに重なって感じられる瞬間がありました。

 また、キュリー夫人はラジウムを我が子のように愛していて、夫のピエールと「(生成されたラジウムが)きれいだったらいいね」と話したり、二人で光るラジウムをうっとりと眺めたりしていたそうです。私も、作品の色づかいは(システムによって決めるので)コントロールできないけど、完成した作品がきれいだったらいいな、と思いながら制作していました。

 そうしたら、中心部の色彩を決める命日の曜日や天気が明るい色にあたるもので、不思議なことに中央の四角形の部分が光っているように見える仕上がりになって。「もしかしてこれはラジウムなんじゃないか!?」と思いましたね。今思うと、あのときは少しおかしくなっていたと思うんですけど(笑)。

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Maki Fine Artsでの展示風景

──偶然とは思えない不思議な現象ですね。もともと、どのようなきっかけでカラーチャートを使う手法に行き着いたのでしょうか。

 大学を卒業しても絵を描き続けたいと思っていたのですが、学校を卒業すると課題の締め切りなどもないので、作品を「いつ終わらせればいいか」わからなくなってしまったことがありました。

 私は大学を卒業して以来、八王子のLuckyHappyStudioという共同アトリエで制作しています。周りには同じようにたくさんの共同アトリエがあったりして、交流も盛んです。そんななか「いいじゃん」と絵をみた人に言われたりすることがあって、私が日常の一部として描いてきたものを「いい」と思う人がいるんだな、と驚くことがあって、発表したい気持ちが高まっていました。

 一方で、人に見せるからには作品に対する責任は私が負うものだろうし、「終わってないもの」をだれかに見せるというのは気持ち悪い。でも、「終わり」はたんなる感覚で定義できるものではないのではないかと思ったりして、作品を発表する意味について悩んでいました。

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制作に4年を要したという《たたかうえシリーズ 別居・震災・個展・離職》(2014)は、自らの人生における出来事から発想した作品

 そんな頃、身近な人がうつ病と診断されました。どうすればその人の苦しみがわかるのだろうと考えて、病気のことを調べ始め、さまざまな人物の人生のストーリーに行き着きました。他人の気持ちは絶対にわからないけれど、あるものさしを設定して人生を絵にすることで、その人に寄り添うことはできるかもしれないと気づきました。そして、誕生日という始まりがあって、命日という終わりがある、ひとの人生という有限なものをモチーフとすることで、作品を完成させることに迷わなくなるとも思ったんです。

 以前は派遣社員として働きながら制作していましたが、作品を発表できる機会も増え、いまは、就労時間が短くなるようにアルバイトに変えて制作をしています。制作だけできたらいいのですが、仕事をする経験や、そのなかで考えたことは作品が変化するきっかけにもなっていると感じます。時間の使い方やデータの抽出の仕方を学んだり、「メールが遅れる」ってどういうことなんだろう、空間がゆがんでいるのだろうか、なんて、学生時代には考えなかったようなことが気になったりして。

 ただ、状況が変わっても、人の人生を描きたい気持ちは変わっていません。共同アトリエで一緒に制作をしている仲間には、言動が面白い人や天才肌の人も多いんです。でも、そういう才能は私にはないし、そもそも「自分」というものがそんなにないから「他人」を描きたいんです。

──絵画を制作するという行為に向かい合う中で生まれた手法だったのですね。これまでに俳優の渥美清、自転車レーサーのマルコ・パンターニ、写真家の星野道夫などをモチーフとしていますが、これから描きたい人はいますか?

 そうですね、まだ考えているところで、オススメの人をいろいろな人に聞いたりしているのですが...。波瀾万丈な人生を送った人や犯罪者について調べたこともあったのですが、わざとらしくなってしまう気がして、作品にすることができませんでした。アーティストや数学者は面白いかもしれないですね。いまは、自分の関心に寄せて描く人物を選んでもいいのかなと思っています。

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片山真妃と《MarieCurie-Sklodowska(Madame Curie)18671107-19340704》

PROFILE
かたやま・まき 1982年東京都出身。多摩美術大学油画科卒業。「VOCA展2014」(上野の森美術館)などに出品。主な個展に「 When the sun is at its northernmost point./一番明るい日」(2015、HARMASGALLERY)、「If spring comes/春になったら」(2013、XYZcollective)など。twitterアカウント(@m_curie11070704)にて、本展出品作品の制作過程を公開している。http://makikatayama.tumblr.com/

片山真妃個展「キュリー夫人年表」
会期:2016年1月9日~2月7日
場所:Maki Fine Arts
住所:東京都新宿区改代町4 黒川ビル1階
開館時間:12:00~19:00
休館日:月、火、祝日
URL:http://www.makifinearts.com/jp/

(構成=近江ひかり)

パフォーマンスとサウンドの祭典 TEFが今週末まで開催中!

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トーキョーワンダーサイト(TWS)本郷では、2016年2月7日まで「トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバル(TEF)Vol.10」が開催されています。本企画は前・後期あわせて約3か月にわたり、パフォーマンスやサウンド・インスタレーションを展開してきたイベントです。

 展覧会や若手クリエイターの支援を行うトーキョーワンダーサイト(TWS)の3施設のうち、2001年の開館以来、TWS事業の拠点となってきた東京・文京区の「TWS本郷」において、2016年2月7日まで「トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバル(TEF)Vol.10」が開催されています。「TEFパフォーマンス」部門と「TEFサウンド・インスタレーション」部門が設けられ、国内外から集まったアーティストが、公演・展示を行う企画です。

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Photo by Kazuo Yamashita

 両国門天ホールとTWS本郷が会場となるパフォーマンス部門では、それぞれの特性を活かした公演が開催されてきました。TEF vol.10の公演プログラムの最後を飾る2月5日と6日には、TWS本郷にて、Noismで活躍したダンサーとギタリストによって結成されたダンスグループ「素我螺部(スカラベ)」によるパフォーマンスが予定されています。

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撮影=川久保ジョイ
© Tokyo Wonder Site

 サウンド・インスタレーション部門では、公募で選ばれた3企画に加え、前回のTEFの最優秀賞受賞者・大和田俊による作品を展示。後期では、大和田の「Paleo-Pacific」とドイツ人アーティスト、メラニー・ヴィンドルの「リアルタイム・オペレーター」を展示しています。6日には、音楽学研究者、高橋智子をゲストに迎え、大和田のアーティスト・トークを、7日には、ヴィンドルによるパフォーマンスを開催予定です。

トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバル(TEF) Vol.10
■TEFパフォーマンス「素我螺部|SELL OUR BODY 2」
日時:2016年2月5日 19:30〜、6日 19:30〜
会場:トーキョーワンダーサイト本郷
住所:東京都文京区本郷2-4-16
アーティスト:素我螺部(藤井b泉、宮原由紀夫、篠原未起子、原 大介)
チケット:2800円(要予約、詳細は下記WEBサイトにて)
URL:http://www.tokyo-ws.org/archive/2015/09/tef10-p15.shtml

■TEFサウンド・インスタレーション 第2期
会期:2016年1月9日~2月7日
会場:トーキョーワンダーサイト本郷
住所:東京都文京区本郷2-4-16
時間:11:00〜19:00
休館日:1月12日、18日、25日、2月1日
入場料: 無料
アーティスト:大和田 俊「Paleo-Pacific」、メラニー・ヴィンドル「リアルタイム・オペレーター」


◆大和田 俊「アーティスト・トーク」
日時:2月6日 14:00~15:30
ゲスト:高橋智子(音楽学研究)ほか
URL:http://www.tokyo-ws.org/archive/2015/09/tef10-si03.shtml

◆メラニー・ヴィンドル「プカプカ」-6つの巨大な風船とインタラクティブ・プログラミングのための
日時:2月7日 18:00~18:30
URL:http://www.tokyo-ws.org/archive/2015/09/tef10-si04.shtml


岡山で新たな芸術祭「Okayama Art Summit」

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2016年10月9日から、岡山市で「岡山芸術交流 Okayama Art Summit 2016」が開催されます。テーマは「Development/開発」。アーティスティック・ディレクターに、幅広い分野での活躍を見せるアーティスト、リアム・ギリックを起用し、彼が選定した28作家(予定)が展示を行います。それぞれが特定の視点から岡山市と展示作品を眺める順路と、グループ鑑賞ツアーで巡る順路の2種類の順路が想定されており、それらが交差することで、新たな視点が生み出されることでしょう。

作家と作家が交流し新たな価値を生み出す

 日本各地で芸術祭が目白押しの2016年。一風変わった芸術祭「岡山芸術交流」の開催が新たに発表された。英文タイトル「Okayama Art Summit」にある「サミット」という言葉が、本展が他の芸術祭と異なることを端的に示している。

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フィリップ・パレーノ No More Reality, La Manifestation 1991 (参考作品)
©The artist


 本展の総合プロデューサー石川康晴は、「earth music & ecology」などのファッションブランドを持つクロスカンパニー代表であり、かつアートコレクターの顔も持つ。岡山といえば、石川、那須太郎(TARO NASU代表・本展総合ディレクター)、インテリアデザイナー片山正通と、岡山出身の3人によって開催されたアートイベント「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」(2014)が記憶に新しい。参加作家が12名であった「Imagineering」から、本展は参加作家28名(2016年1月現在)と、その規模が大きくなった、と見られる。が、違いはその規模だけではなく「岡山を知ってほしい」から、「岡山から発信したい」と、視座を広げた企画が準備されているという。

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アーティスティック・ディレクターのリアム・ギリック。平面、立体、映像に加え、音楽、執筆、キュレーションなど活動は多岐にわたる


 本展のもっとも特徴的なことは、アーティストのリアム・ギリックをアーティスティック・ディレクターに起用したことだ。ギリックは「ただ作品を配置していくのではなく、その土地に根づき、成長していくような感覚をアーティストにも来場者にも生む展示にしたい」と語る。さらに、世界中から代表者が集まる国際会議を「サミット」と言うように、世界中から集まったアーティスト同士が交流を持つことで、新たな創造性を生み出すようなプランを持ち合わせているという。出品作家は、ペーター・フィッシュリ、サイモン・フジワラ、ピエール・ユイグ、アニカ・イなど。「成長・進化することを主題としているアーティストを集めた」とギリックは語る。

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Okayama Art Summit 2016のメインビジュアル。ロゴマークについてギリックは「作品の"ルーツ"と会場となる都市を巡る順路"ルート"という2つのコンセプトを込めた」という

 本展のテーマは「Development」。アーティスト自身の成長、作品の発生・拡張、来場者個人の進化、さらには岡山という土地の繁盛が期待される。美術を触媒として、岡山で新たな芸術交流が生まれ、岡山全体が作品となるような芸術祭。体感するのが待ち遠しい。

 文=編集部
『美術手帖』2016年2月号「INFORMATION」より)

岡山芸術交流 Okayama Art Summit 2016
会期:10月9日〜11月27日
場所:岡山県岡山市(天神山文化プラザ、旧後楽館天神校舎跡地など)

URL:www.okayamaartsummit.jp

工藤麻紀子が北参道の小山登美夫ギャラリーで国内3年ぶりの個展

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2016年2月6日〜3月5日、東京・北参道の小山登美夫ギャラリーにて、工藤麻紀子の個展が開催されます。国内外で作品を発表し続け、2015年には山崎ナオコーラの小説の装画にも採用された工藤の作品。今回の個展では新作約18点が展示されます。

 小山登美夫ギャラリー(東京・北参道)にて、2016年2月6日〜3月5日、工藤麻紀子の個展が開催されます。同ギャラリーでは2013年以来3年ぶりとなる今回の個展では、大小約18点の新作が発表されます。

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工藤麻紀子 流星群 2015 キャンバスに油彩 194.0 x 130.5 cm  © Makiko Kudo Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 工藤麻紀子は1978年青森県生まれ。2002年に小山登美夫がキュレーションしたグループ展「フラジャイル・フィギュアズ」(パレット・クラブ、東京)への出展を経て、今日まで国内外の多数の展覧会に参加し、活躍の場を拡げています。

 工藤の作品は、ロサンゼルス現代美術館をはじめ海外の美術館を含むパブリックコレクションに収蔵され、2015年には山崎ナオコーラの小説『反人生』(集英社)の装画となるなど、多くの人の目に触れ、根強いファンを獲得しています。

 自分自身の作品について「見た人が、『これ見たことあるな』って、すんなり入っていければいいなと思っています。自分が好きな絵も、拒否されない、理屈なくすっと入っていける絵だから」と語る工藤。展覧会初日の2月6日には、作家を囲んでのオープニングレセプションが予定されています。

工藤麻紀子展
会期:2016年2月6日~3月5日
会場:小山登美夫ギャラリー
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-10-11
電話番号:03-6434-7225
開館時間:11:00~19:00
休館日:日、月および祝日
URL:http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/makikokudo2016/

会期中に下記のイベントを開催します。

【関連イベント】
オープニングレセプション ※作家も在廊予定です。
日時:2016年2月6日 18:00〜20:00
会場:小山登美夫ギャラリー

櫛野展正連載:アウトサイドの隣人たち ②怪獣ガラパゴス天国

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ヤンキー文化や死刑囚による絵画など、美術の「正史」から外れた表現活動を取り上げるアール・ブリュット美術館、鞆の津ミュージアム(広島)のキュレーターを務める櫛野展正。2015年12月に同館が自主企画展の開催を終了した後も、自身でギャラリー兼イベントスペース「クシノテラス」を立ち上げ、「表現の根源に迫る」人間たちを紹介する活動を続けています。櫛野による連載企画「アウトサイドの隣人たち」第2回は、紙面いっぱいに大好きな怪獣たちを描き続ける小さな表現者、八木志基(やぎ・もとき)くんを紹介します。(連載第1回はこちら

 出逢いは突然にやってくる。アーツ千代田3331(東京・末広町)で美術家・中津川浩章がファシリテートするアートスクール「エイブルアート芸術大学」を見学した際、心惹かれる絵と出逢った。

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八木志基くんが描いた、首から下がガイコツのウルトラ怪獣たち

 画用紙に黒ボールペン1本で描かれた緊張感漂うモノトーンの画面。そこに描かれていたのは首から下が白骨化したウルトラマンに登場する怪獣たちで、よく見ると絵のそばには「ベリアルのガイコツ」「ダダのガイコツ」など各々の名前が記されている。何より驚いたのは、この作者がまだ小さな子どもだったということだ。

 神奈川県川崎市のとある高層マンションの一室で、作者の八木志基くんは両親と3歳の弟と暮らしている。2003年生まれの志基くんは現在12歳の小学6年生。4歳のときに医師から自閉症と診断を受け、現在は地元小学校の特別支援学級に通っている。小さなころから、とにかく絵を描くことには熱中していたという。

 初めは駅の時刻表や英語のアルファベットに興味を示し、スケッチブックにクーピーで殴り描きながらも、そうした文字の形を記憶して書いていた。それでいて、「『おさるのジョージ』や『アンパンマン』などの絵本が好きで、よく眺めては描いていた」と母は語る。当時の絵を見せてもらったが、たしかにどこかそうしたキャラクターを彷彿とさせるような心温まるタッチの絵が多い。

 それがあるときから、ウルトラマンに熱中し、ただひたすら怪獣などの絵を描き続けるようになった。母は「7歳のとき生まれてくるはずだった弟が死産したり、その翌年には東日本大震災を経験し津波の映像にショックを受けたりしたことが引き金になっているのでは」と分析するが、特撮ヒーロー好きの父の影響も否めない。

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紙をつなぎ合わせた画面に「ウルトラマン」の登場キャラクターたちが所狭しと並ぶ

 特徴的なのは、すべて画面の下から描いていること。黒ボールペンを使っていきなり描く。もちろん下書きなどしない。間違えたときは上から紙を貼って描き直すようで、セロハンテープで補修した跡が何か所か見受けられた。下から積み上げていくように描く怪獣は縦横無尽に広がっていき、画面の端まで及ぶと、ときには紙をつぎ足したり、怪獣の半身だけ描いたりする。

 作品の中には、怪獣同士が隣接しあい、圧倒的な密度を生み出している絵もある。しばらく眺めていると、集まった怪獣がまた別の生命体にも見えてくるから不思議だ。折り重なった怪獣は様々な方向を向いているが、参考にしている書籍『全ウルトラ怪獣完全超百科』(講談社)とは異なる向きで描くこともあるという。最後尾にいる怪獣の手足の位置まで忠実に描いているのは驚かされた。なんという再現能力の高さだろう。

 コミュニケーションの面で障害があり、スムーズに自分の考えを言葉で述べることが苦手な彼は、小さいころから自分のほしいものを絵に描いて母親に訴えることが多かったという。学校でまだ「親友」と呼べる友だちはいないそうだが、代わりに帰宅後から就寝前までこのドローイング行為を長年続けてきた。同じ怪獣を何度も登場させていることもあり、年々作画技術が上達していることは僕の目にも明らかだった。しかも、描く紙はすべて父が仕事で使った書類の裏面。これなら、画面を大きくしたいときはセロハンテープで繋げればいい。手探りのなか、自分で見つけた画法なのだろう。

 ところで、なぜガイコツの絵を描くようになったのだろうか。本人に聞くと「なんかカッコイイから」という答えが返ってきた。このモチーフは、自宅ではなくエイブルアート芸術大学のみで描かれるものだと言う。自宅とは違う質感の紙や環境で、彼自身も他人の目を意識し、自分なりの「実験」を繰り返しているように思えた。

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「ウルトラマン」以外のキャラクターもガイコツになる

 そして、志基くんにとって何より大事なのが受け手の存在だ。どんなに素晴らしい表現でも、それを収集し保管する人たちの存在がなければ、ゴミとして破棄され、これらの表現を誰も目にすることができなくなる。既存のルールや常識にははまらない表現を、どのように周囲が評価し受け止めていくか。

 就学後に何か所か通った絵画教室では、描くモチーフや色に対してさまざまな制約があり、上手く馴染むことができなかった。そんななか、2年半前にたどり着いたのが自由に好きな絵を描くことのできるこのアートスクール。さらに、3歳で初めて絵にならない文字を描き始めたときから、これまでほとんど破棄することなく彼の描いた表現を保管し続けている両親の存在はとても大きい。衣装ケースに保管された多量のドローイング群に、僕はすっかり打ちのめされてしまった。

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両親が大切に保管している志基くんの作品。お気に入りの作品を見せてくれた

 最近はオリジナルのキャラクターも描き始めたようだが、まだ若い彼の表現はこれからどんどん進化していくことだろう。紙とペンとセロハンテープさえあれば、彼の創造する世界は無限にどこまでも広がっていくのだから。

(文=櫛野展正)

PROFILE
くしの・のぶまさ アール・ブリュット美術館、鞆の津ミュージアムキュレーター、ギャラリー兼イベントスペース「クシノテラス」主宰。2015年12月13日まで開催された鞆の津ミュージアム最後の企画展「障害(仮)」では、「障害者」と健常者の境界について問題提起した。クシノテラスWEBサイト:http://kushiterra.com/

クシノテラスを応援しよう!

 櫛野展正の新プロジェクト「クシノテラス」では現在、ギャラリーの修築や展覧会経費のためのクラウドファンディングを実施中。1000円から支援が可能で、リターンとしてアウトサイダー・アーティストたちの作品が進呈されます。下の画像から、特設ページにアクセスできます。

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クシノテラスvol.2
日比野克彦トークイベント「これまで日比野 これから日比野」
日時住所:2016年3月20日 18:30〜
会場:クシノテラス
住所:広島県福山市野上町1-4-2 フジノビル3階
参加費:2000円
申込み:http://goo.gl/NYNrWM

あざみ野で、赤々舎代表が講師の市民講座「写真集ができるまで」

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横浜市民ギャラリーあざみ野が主催する市民講座「あざみ野カレッジ」では、2016年2月20日、「写真集ができるまで」と題し、写真集・美術書の出版社である赤々舎の代表を講師に迎えた講座を開催します。本講座は、同ギャラリーにて開催中の「考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一展」の関連イベントとして開催されます。

 横浜市民ギャラリーあざみ野が、生涯学習を推進する目的で開催している市民講座「あざみ野カレッジ」。2016年2月20日のあざみ野カレッジでは「写真集ができるまで」と題し、赤々舎代表の姫野希美を講師に迎えた講座を開催します。

 「あざみ野カレッジ」は「アートの領域をひろげ、生活の中にあるもっといろいろ知りたいことを学ぶための学び舎」です。高校生以上なら誰でも学生になることができ(中学生以下は応相談)、学生証(発行手数料500円)も発行されます。2011年の開校以来、美術館学芸員、ダンサー、映画監督、ギター奏者、盆栽作家など様々な職種の講師を迎え、知的好奇心をくすぐる講座を企画しています。

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赤々舎代表・ディレクター、姫野希美。

 今回の講座は、同会場にて開催中の写真展「考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一展」の関連イベントとして開催されます。赤々舎は、石川竜一の木村伊兵衛写真賞受賞作である写真集『絶景のポリフォニー』『okinawan portraits 2010-2012』の版元。同社では、これまでにも志賀理江子『CANARY』、岡田敦『I am』、浅田政志『浅田家』など、木村伊兵衛写真賞受賞者の写真集をはじめ、数多くの美術書を手がけてきました。同社代表としてディレクションも手がける代表の姫野が、写真家との出会いから写真集ができるまでについて語ります。参加申込の締切は2月8日(必着)です。

あざみ野カレッジ「写真集ができるまで」
日時:2016年2月20日 14:00〜15:30
会場:横浜市民ギャラリーあざみ野 3階アトリエ
住所:横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
電話番号:045-910-5656
講師:姫野希美(赤々社代表)
対象:高校生以上
定員:40名程度(応募多数の場合抽選)
参加費:500円 ※ただし、あざみ野カレッジ初回受講者は学生証発行手数料500円が別途必要。
申込方法:「往復はがき(〒225-0012 横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 横浜市民ギャラリーあざみ野 あざみ野カレッジ係宛)」「ホームページの申込フォーム」「直接来館(横浜市民ギャラリーあざみ野2階事務室)」のいずれかで受付。応募多数の場合は抽選。
締切:2月8日必着 ※締切後定員に満たない場合は先着順でホームページ・電話・直接来館で受付
URL:http://artazamino.jp/series/azamino-college/

『奇界遺産』で話題の写真家・佐藤健寿の新刊『奇界紀行』に注目

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TBS系TV番組「クレイジージャーニー」への出演などで注目を浴びる写真家・佐藤健寿が、自身が体験した「奇妙なもの」をめぐる旅を綴ったフォトエッセイ『奇界紀行』(KADOKAWA/角川学芸出版)を刊行しました。「国境ではなく、理解という名のボーダーを超えた世界」が、写真を通して体験できます。

 佐藤健寿は、武蔵野美術大学卒の写真家。自然物・人工物・タブー・奇習などの「奇妙なもの」を求めて、世界各地を旅しています。世界90か国以上を巡って撮影された写真集『奇界遺産』(エクスナレッジ 、2010)『奇界遺産2』(エクスナレッジ、2014)は3万部のベストセラーを記録しました。

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佐藤健寿『奇界紀行』より

 佐藤の博物学的・美学的視点のもとに撮影される写真や綴られる文章は、多くの人々の好奇心を刺激し「奇界遺産」という造語とともにたちまち注目の的となりました。

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佐藤健寿『奇界紀行』より

 『奇界紀行』は、約10年わたる旅の紀行文を集めた著者初のエッセイ集です。タイの海中に眠る石像、インド最高の聖者、アフリカの呪術師、南米のUFO村など、次々と巻き起こる未知との出会いが記された旅の紀行文に加えて、未公開写真を含む100点を超える写真が収録された本作は、読者に「奇界」旅行の全貌を鮮明に伝えます。

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佐藤健寿『奇界紀行』より
佐藤健寿 フォトエッセイ『奇界紀行』
著者:佐藤健寿
装丁:コズフィッシュ(祖父江慎+鯉沼恵一)
価格:本体1800円+税
発売:2015年12月24日
仕様:四六版 並製、320頁
出版社:KADOKAWA/角川学芸出版
URL:http://kikaiisan.com

30年にわたる仕事が詰まった一冊、内藤礼の初の作品集が刊行 

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2015年10月、美術家・内藤礼の作品集『内藤礼|1985-2015 祝福』がmillegraphより刊行されました。1985年の卒業制作を原型とした86年作《Apocalypse Palace》から2015年の作品まで、30年にわたる内藤の活動を収めた初の作品集です。畠山直哉などによる展示写真のほか、内藤によるテキストとドローイング、絵画作品を収録。神奈川県立近代美術館学芸員の三本松倫代と、同書編集人の富井雄太郎が、各作品の解説を執筆しています。内藤礼本人に、本作品集について話を聞きました。

「私は、『地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか』を問い、これまで、ただひとつの作品を制作してきたと感じています。ただそうして生きてきました」。

 自身の制作についてそう語る、内藤礼。この度、30年におよぶその活動をまとめた、初の作品集が刊行された。

「そして、ある時代、ある社会の中で、人間がものをつくるとき、それに立ち会い見ている人がいるのです。この本は回顧ではなく、同じ問いのもと、そうした生きている流れのなかに生まれるものとして、空間、立体、平面、言葉の分別を越えたひとつの作品であるようにと、自分から発信するかたちにしました」。

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作品集より。掲載写真は2011年「佐賀町アーカイブ COLLECTION plus, 2 内藤礼展」(佐賀町アーカイブ、東京)の展示風景(撮影=杵嶋宏樹)

 内藤の作品のほとんどは建物や空間全体を含めて表現するため、そのまま保存するのは難しい。

「ひとりずつ鑑賞する1990年代の初期作品などは、私が会場に毎日いて1時間に1回整えることで、次の人に入ってもらうことができるというような極端な繊細さと、自分と作品との強い関係がありました。それは私以外の人は再現不可能であるし、もう私自身でも再現できない。その後の作品も『場』との関係、その日の気候や、見る人のそのときの心の状態との関係のなかで、とても強い形でそこに『顕れる瞬間』を感じ取るようなものなので、別の場所にそのまま持っていって成立するものではない。ある意味、流れて消えていってしまうものが多いのです。それは作品の本質であるのだけれど、一方で、長い時間のなかでひとつのことを、繰り返し見たり考えたり感じたりできなかった」。

 作品体験の機会が持てないこと。それとともに、若い世代がまわりに増えたことも作品集制作のきっかけになったという。

「初期作を知らない若い方たちにも、生きていることやモノが生まれてくることの不思議としか言いようのない、うねりのようなものの全体と、一つひとつの作品が切り離せないものとして連なっているということを知らせたいと思いました。作品集があることで、作品を繰り返し見て個々の作品体験を何度も探り、作品を自分のものにしていくことが、もっと自由になるのではないかと感じています」。

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作品集より、内藤の仕事場

PROFILE
ないとう・れい 1961年 広島県生まれ。1985年 武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。 代表作に《地上にひとつの場所を》(1991年発表、97年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館など)、2010年に豊島美術館(香川)に恒久設置された《母型》など。

文=藤田容子
『美術手帖』2016年2月号 INFORMATIONより)

著:内藤礼
写真:畠山直哉 他
解説:三本松倫代、富井雄太郎
デザイン:下田理恵
発行:millegraph
判型:229×297×30mm・函入り
ページ数:288ページ
言語:日・英
定価:9,000円(税別)

応募資格一切不問 ポコラート全国公募の募集締切2月11日まで

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障がいの有無、年齢、経験など応募資格一切不問の創作表現の公募「ポコラート全国公募 vol.6」が、作品部門とワークショップ部門の2部門で応募を受け付けています。応募締切は2016年2月11日です。

 2010年よりスタートした「ポコラート全国公募」は、障がいの有無、年齢、経験など応募資格が一切不問の創作表現の公募です。過去5回の応募数は6,000点を超え、2歳から94歳まで、日本全国から多くの人が参加しています。現在応募受付中の「ポコラート全国公募 vol.6」は、2016年2月11日まで、作品部門とワークショップ部門の2部門の作品・企画を募集しています。

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ポコラート全国公募 vol.5 受賞者展(2016年1月7日〜20日)

 「ポコラート(POCORART)」とは Place of "Core+Relation ART"の意。障がいの有無にかかわらず人々が出会い、互いに影響し合う場を意味し、そうした場をつくる試みです。ポコラートの活動は、2010年以来、アーツ千代田3331を拠点に全国的な広がりを見せています。ポコラートのなかでも中心的な活動が、「ポコラート全国公募」です。初回は障がいのある人のみを対象とした公募でしたが、2回目以降現在にいたるまで、障がいの有無、年齢、経験などを問わず幅広く応募を呼びかけています。

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ポコラート全国公募 vol.5 受賞者展(2016年1月7日〜20日)

 「ポコラート全国公募 vol.6」の審査員は、美術家の会田誠、鴻池朋子、藤浩志の3名に、東京国立近代美術館主任研究員の保坂健二朗、ミュージアムエデュケーションプランナーの大月ヒロ子(IDEA, INC.代表)、そしてアーツ千代田3331統括ディレクターでありアーティストの中村政人です。

 2016年3月18日に審査員による審査を行ったあと、翌日から3日間、全応募作品を一般公開し、来場者による投票を受け付けます。審査の公平性、企画の公共性を重視した取組みです。入選作品の展示、ワークショップの実施は2016年7月(予定)に行われます。

ポコラート全国公募 vol.6
募集部門:①作品部門 ②ワークショップ部門
募集期間:2015年12月1日〜2016年2月11日(必着)
主催:千代田区、アーツ千代田 3331
運営:ポコラート事務局
住所:東京都千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田 3331内
電話番号:03-6803-2441(代表)
URL:http://pocorart.3331.jp/

伊兵衛賞受賞の田附勝、秋田の限界集落で撮影した作品を展示

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2016年2月12日〜3月21日、写真家・田附勝による「みえないところに私をしまう 2013-2015」展が、秋田公立美術大学ギャラリー BIYONG POINT(秋田)にて開催されます。東北の限界集落・八木沢で撮影され、トタン小屋で展示された作品が、展示会場をギャラリーに移して公開されます。

 写真家・田附勝の「みえないところに私をしまう 2013-2015」展が、2016年2月12日〜3月21日に、秋田公立美術大学ギャラリー BIYONG POINT(秋田)にて開催されます。

 田附勝は2006年より東北地方を舞台に作品を制作している写真家です。2012年に、リトルモアから刊行された写真集『東北』が第37回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。

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撮影=田附勝

 本展では、2013年夏に田附勝が限界集落の八木沢集落(秋田)に一週間滞在し、集落の住民や景色を撮影した作品を展示。もともとは、上小阿仁村(秋田)で行われたアートプロジェクト「KAMIKOANI プロジェクト秋田」(2013〜2015)のために制作され、撮影地のトタン小屋に展示されていた作品です。それから3年が経過し、自然に風化した作品たちが、展示会場をギャラリーに移し、再び公開されます。

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撮影=田附勝
みえないところに私をしまう 2013-2015
会期:2016年2月12日~3月21日 ※会期中無休
場所:秋田公立美術大学ギャラリー BIYONG POINT(ビヨンポイント)
住所:秋田県秋田市八橋南1-1-3 秋田ケーブルテレビ(CNA)内
電話番号:018-888-8478
開館時間:9:00~18:00
入場料:無料
URL:http://www.akibi.ac.jp/news/個展 田附-勝「みえないところに私をしまう-2013-201

会期中、下記のイベントが開催予定です。

◆オープニングレセプション
日時:2月12日 18:30〜19:30

◆トークイベント 「記憶と時間 ―八木沢でのはなし」
日時:3月20日 14:00〜15:30
会場:CNA エントランスホール
出演:田附 勝(写真家)、石倉 敏明(芸術人類学、秋田公立美術大学講師)

記録について考える展覧会が2月28日まで吉祥寺で開催!

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「カンバセーション_ピース:かたちを(た)もたない記録」展が、2016年1月16日~2月28日、武蔵野市立吉祥寺美術館(東京)で開催されます。

 Conversation pieceとは、家族の肖像や親類の団らんの図のこと。本展は、家族写真をもとに描きつづける小西紀行と、パーソナルな記録や記憶の価値を探究するアーカイブ・プロジェクト「AHA!」(Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ)の展示を通じて、家族写真やホームビデオをもとに「記録」について考える展覧会です。

 小西紀行は、日本各地やマイアミ、香港で活動したのち、2010年からは広島の離島を拠点とし、祖父の家に住みながら自身の家族写真をもとに油彩で人間を描き続けています。小西の作品は、Conversation pieceでありつつもぼやかされた人の形などから、見る人に想像の余地を与えます。

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小西紀行 untitled 2015年

 AHA!(Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ)は、現在劣化や散逸の危機に瀕している8ミリフィルムを、戦後日本の生活文化を記録した貴重な資料とし、その収集、公開、保存、活用を進めるプロジェクトとして始動しました。本展では、武蔵野市周辺の各家庭から収集した8ミリフィルムや写真とともに、鑑賞中の家庭の会話を、1冊の本『あとを追う』にまとめました。会場でフィルムの映像や本を鑑賞することができます。

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AHA! あとを追う 2015年〜2016年

 ありふれた事物に触れることによって、それぞれに異なる記憶が蘇り、会話が生まれるという記録(アーカイブ)のあり方を探った本展。会場は絵画、文章、映像であふれています。関連イベントとして行われるギャラリートークやワークショップについて、詳しくは、ホームページをご確認ください。

カンバセーション_ピース:かたちを(た)もたない記録
会期:2016年1月16日~2月28日
場所:武蔵野市立吉祥寺美術館
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目8番16号 FFビル7階
電話番号: 開館時間:10:00〜19:30
休館日:1月27日、2月15日、2月24日
入場料:100円(小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
URL:http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/index.html

静物画家ジョルジョ・モランディ この春、17年ぶりの個展開催

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ジョルジョ・モランディ(1890〜1964)の個展が、2016年2月20日〜4月10日、東京ステーションギャラリーにて開催されます。日本では3度目となる個展で、ボローニャのモランディ美術館の協力のもと、約100点の作品が集結します。

 ジョルジョ・モランディは、20世紀を代表するイタリアの画家です。日本での個展は3度目で、17年ぶりの開催となります。モランディは生涯を通じて、自身の故郷ボローニャを離れることなく、静物もしくは風景をひたすら描き続けました。

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自宅でのジョルジョ・モランディ 1961
© Antonio Masotti, Bologna

 モランディの作品に描かれるのは、いつも同じ瓶や壺。それらのモチーフを並べ替えることで、構図や色彩を無限に変化させ、印象の大きく異なる作品を生み出しました。今回の展示では、こうした表現のバリエーション、すなわち「変奏」に焦点を当てます。

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ジョルジョ・モランディ 左手に白いカップのある静物 1930 エノス・フェッリ・コレクション
© Luciano Calzolari - Studio Blow Up, Bologna

 日本での開催は17年ぶりとなる本展は、ボローニャのモランディ美術館の協力を得て、油彩画約50点、水彩、素描、版画約50点が集まる、贅沢な展示です。講演会やワークショップも予定されています。

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ジョルジョ・モランディ 花 1952 ミラノ市立ボスキ・ディ・ステファノ邸美術館
© Comune di Milano - Casa Museo Boschi Di Stefano
ジョルジョ・モランディ─終わりなき変奏
会期:2016年2月20日〜4月10日
場所:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで、金曜日は20:00まで開館)
入館料:一般 1100円/高校・大学生 900円/中学生以下 無料
休館日:月曜日(ただし3月21日は開館)、3月22日
URL:http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201602_morandi.html


■記念講演会「モランディは私たちを失神させる」
日時:3月5日18:30~(約90分、開場18:20)
講師:峯村敏明(美術評論家)
場所:2階展示室
料金:聴講無料
定員:70名(未就学児不可)
申込方法:開館時間中に電話で申し込み。


■ワークショップ「モランディのわざを解剖する」
日時:4月4日14:00~(約2時間)
講師:宮嶋葉一(画家)、末永史尚(美術家)、横山奈美(画家)
場所:企画展示室
料金:参加無料
定員:20名(小学校4年生以上)
申込方法:開館時間中に電話で申し込み。
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