ドイツと日本を代表するクリエイティブ集団「アート+コム」と「ライゾマティクスリサーチ」による展覧会が、1月14日より初台のNTTインターコミュニケーション・センター [ICC] にて開催されている。両者の大型インスタレーションから見えてくるテクノロジー表現の新しい「詩学」とは?
1988年に設立され、ベルリンを拠点に新しいメディアやテクノロジーを用いて、インスタレーションや空間デザインを展開するクリエイティブ集団「アート+コム」、ライゾマティクスのなかでも研究開発と表現の追求というメディア・アートに軸を置きながら、様々な分野のクリエーターとのコラボレーションも手がける「ライゾマティクスリサーチ」による展覧会。ともにメディア・アートとクライアントワークを手がけ、新しいテクノロジーを用いた表現を社会に実装することを目的としている点でも共通している2組だ。キャリアに20年近く差のある両者だが、ライゾマティクスのメンバーは、アート+コムの仕事や作品に多くの刺激を受けてきた世代であり、現在ではお互いの仕事を注目し合う関係になっている。
この展示では、両者の作品に共通する特徴である「光と動き」という要素を体感できる、2つの大型インスタレーションを見ることができる。

5枚の円盤状のミラー・ディスクが、空間内をゆったりとまるで踊っているかのように動くアート+コム《RGB|CMYK Kinetic》では、赤、緑、青の三原色(RGB)の3台のスポットライトの光によって、床面のスクリーンに白色光をつくり出す。ディスクはその光を反射し、床面のスクリーンに色のついた影を描き出し、ディスクの後方に落とす影は、シアン、マゼンタ、イエロー(CMY)の3色に変換されている。コンピュータ制御によるディスクのなめらかな動きと色鮮やかな光と影、そしてこの作品のために制作されたミニマルな楽曲とが同期して、どこか時間軸のある舞台を見ているような、「ストーリー」を感じることのできる空間体験となっている。
一方、ライゾマティクスの《distortion》は、本展のために制作された新作。側面が鏡で囲われた直方体の5台のカートが、無線による制御と光学式トラッキング技術によって自走し、空間内を直進し回転して、光とともに動いている。この作品では、モーション・キャプチャー・カメラによってカートの動きがトラッキングされ、そのリアルタイムの鏡の角度に合わせて反射像が正しい像に見えるように、歪んだ像をカートの鏡面に光として投影している。この光と鏡面に覆われた5台の直方体の戯れが、それぞれが独自の意思をもってパフォーマンスしている「ダンス」のようにも見ることが可能で興味深い。
一見しただけでは、どちらの作品もその構造や仕掛けがどうなっているか理解することは難しいが、これまで人間が「アート」に追い求めてきた「詩学」を、この時代のコンピュータやテクノロジーで「自動的」に表現するという野心的な展示となっている。自動生成された舞台やダンスの新しい「詩学」をぜひ体感してみてほしい。
光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
電話番号:0120-144-199(フリーダイヤル)
開館時間:11:00〜18:00(金・土は〜20:00、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月、保守点検日(2月12日)
入館料:一般・大学生 500円 / 高校生以下無料
URL:http://www.ntticc.or.jp/
編集:美術出版社編集部
出版社:美術出版社
判型:A5判
刊行:2016年12月17日
価格:1728円(税込)