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美術手帖 2016年11月号「Editor's note」

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2016年10月17日発売の「美術手帖 2016年11月号」より、編集長の「Editor's note」をお届けします。

 今号は「ZEN」特集をお届けします。これは、京都から東京に巡回して開催される特別展「禅ー心をかたちにー」(P101)をきっかけに企画された。では、なぜ「禅」ではなく「ZEN」特集なのか。

 まず、現代における私たちの文化や生活への影響を考える際に、仏教文化としての禅から宗教色を脱色して欧米でカジュアルに受け入れられているZENを通して、逆照射するようなかたちで現在の禅を見通してみてはどうかと考えた。そのため、『禅という名の日本丸』や『東京ブギウギと鈴木大拙』などの著作で、欧米における禅の受容とZENへの変容と文脈を語ってきた文化交流史研究の山田奨治氏に監修をお願いした。

 山田氏には、『美術手帖』2016年1月号の「村上隆」特集(監修・橋本麻里)において、「『誤読』される禅」という論考を寄せてもらっている。そこでは、鈴木大拙や久松真一らによって日本の禅とその美術の特質が、戦後のアメリカに紹介されて人気を博していく際に起こった「誤読」について指摘がなされている。それによって、日本の文化を特徴づける禅の美意識として、「わび」「さび」「非対称」が打ち出されて、「ZEN」趣味として浸透していく一方、それに該当しない絢爛な障壁画は、禅の美術から外されていくことになった。そして、現代日本のアーティスト・村上隆がZENのアイコンといえる「円相」を描くという、ねじれと連鎖に着目した。本特集では、村上隆氏へのインタビューでさらに議論を深めてくれている。

 その山田氏には今回、ZENブームの震源地アメリカ西海岸を巡ってもらった。シリコンバレーを中心にサンフランシスコにはテクノロジー系のスタートアップ企業が林立しており、そこでは資本主義の厳しい競争を勝ち抜くため、禅の瞑想に似た「マインドフルネス瞑想法」が社員の研修に取り入れられている。そして、シリコンバレーでは日本の美意識とテクノロジーを昇華したチームラボの展示が盛況を博していた。本特集では、こうした「ZEN」の新しい風景が活写されている。そこからさらに、長い歴史と伝統を誇りながらも、更新を続ける21世紀の禅の未来にまで思いを馳せてみたい。

2016.10
編集長 岩渕貞哉
美術手帖 2016年11月号
編集:美術出版社編集部
出版社:美術出版社
判型:A5判
刊行:2016年10月17日
価格:1728円(税込)

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