さまざまな観点から開発された個性豊かな画材。実際に使用し、その使い心地を体感することで、作品の幅に拡がりが生まれることもあるでしょう。「注目の画材紹介」のコラムでは、アーティストたちに画材との出会いや創作の可能性について話を聞きます。本コラムでは、ターレンスジャパン社の商品「アムステルダム アクリリックガッシュ」と「アムステルダム アクリリックカラー」について、VOCA2014で奨励賞を受賞し、東久留米アートプロジェクト企画(2015)で神社の拝殿の天井画を描くなど、今後の活躍が期待される若手アーティスト、大小島真木が語りました。
輪郭を超えてつながり合う動物、植物、鉱物。この圧倒的な絵画や天井画の作者は、大小島真木。万物の視線を自身に内在化して、人間とは異なる視点から世界の諸相を表現してきた、注目の画家だ。「私にとって絵は、対象と自分の間を移行する視点を再現するための装置です。脳内で起こるその視線の動きを捉える上で、アクリル絵具の乾きの速さ、思考やイメージをどんどんかたちにできる性質が、重要なんです」。

壁画など大作を多く手がける彼女にとって、大容量の「アムステルダム アクリリックカラー」は、制作の大きな助けだ。「大容量なのに上質で、水彩にも近い軽さ、 混ぜやすさも気に入っています。伸びの良さはダントツですね」。色ではとくに、「様々な混色に向く」と語るネープルスイエローグリーンを愛用しているという。

ガッシュは光の筋など強調したい箇所に使う。「すべての物質にはそれぞれの重さ、質感がある。それを描き分ける上で、透明性と不透明性の使い分けは大切にしています」。今回、日本で独自開発された「アムステルダム アクリリックガッシュ」は、メディウムが統一されることで、「アクリリックカラー」と併用できるのも特長。大小島も「今まで併用によるひび割れを気にしていたけれど、これならバンバン使える」と興味を覗かせる。

「東久留米市に建つ南沢氷川神社の拝殿天井画も、人から声をかけてもらってできたこと。ご縁を大事に活動していきたい」と語る彼女。絵画を通して世界の豊かさを伝える、その挑戦は続いていく。

PROFILE
おおこじま・まき 1987年東京生まれ。2011年、女子美術大学大学院修士課程修了。2014年、VOCA奨励賞。2015年12月15日〜2016年1月月24日、津田隆志と二人展「森羅万象」(豊川市桜ヶ丘ミュージアム、愛知県)を開催。WEB:http://www.ohkojima.com/top.htm
(文=杉原環樹+編集部)


現在、大小島真木が下記の展覧会に作品を出品しています。
森羅万象-大小島真木+津田隆志-
会場:豊川市桜ヶ丘ミュージアム1階 第5・6展示室
住所:愛知県豊川市桜ヶ丘町79-2
電話番号:0533-85-3775
開館時間:9:00〜17:00
休館日:月曜日、年末年始