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山口晃が初挑戦!横浜赤レンガ薪能、鏡板公開制作レポート  

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山口晃が8月26日、9月に横浜赤レンガ倉庫で行われる「赤レンガ薪能」のための鏡板(能舞台の奥に設置される松が描かれた板)をクイーンズスクエアで公開制作した。山口が挑んだ鏡板は異なる幅約5.4メートル、高さ約2.1メートルの通常とは異なる透明の板。山口にとって初の挑戦となった今回の鏡板制作、その様子をレポートする。

 人通りの多い横浜・クイーンズスクエアのほぼ中心に位置するクイーンズサークル。山口晃の公開制作は静かなアトリエとはまったく異なる環境で始終行われた。透明なポリカーボネートのパネルに使用した画材は油絵具。観客が見守るなか、一筆入れるごとに遠目から確認し、慎重に筆を進めていく。

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一筆目を入れる山口晃

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幹の部分から構図を決めていく。アクリルパネルや枠組みは今回のためにつくられたもの

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松の葉を描く絵具を準備する

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パネルの表と裏、両方から描いていく

 山口にとって初の試みとなった鏡板公開制作はどのように実現したのか。横浜能楽堂の中村雅之館長はこう語る。「薪能では通常、鏡板は使いません。でも今回は欲しかった。赤レンガ倉庫の1号館と2号館の間、屋外で海に臨む場所に舞台を作るので、普通の木の鏡板にすると奥行きや開放感がなくなる。そこで透明の板にしようと。その時、日本画家よりも現代美術の作家に描いてもらうほうがいいだろうと思いました。ただし伝統を踏まえていないと、どう描いていいかわからない。山口さんが面白いのは洛中洛外図など、もともとある力を上手に取り込むバランスが絶妙。鏡板を本歌として現代的に仕立てるのは山口さんが適任でした」。

 これまでも年に1回のペースでは能を観ているという山口。「能という完成したものを現代の舞台に移すときに、分派させるのか、それとも上書きするのかによって変わってくるかとは思いますが、現代のかたちを絵が示せれば、一つのとっかかりとしてもらえるんじゃないでしょうか。でもいざやってみると何もできないものだなと思いました」と苦労をにじませた。必ず老松を描かなくてはならないという鏡板ならではの前提があるがゆえだ。

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 今回制作された鏡板には山口なりの工夫が施されている。それが「抜け」と「反射」だ。老松には幾筋もの透明な線が走り、向こう側が見えるようになっているが、一部がミラーペーパーで覆われ、こちら側を反射させている。「抜けてばかりだとあまりにも身も蓋もないじゃないですか。だから抜けてない部分をつくりました。狩野永徳が描いた松の根はまるきり白抜きですが、反射率の高い紙を使っているので光を含みながら弾く、つまり鏡と同じような役割を持つんです。それを透明な板でやるとどうなるかという考えがありました」。

 公開制作は明るい屋内空間で行われたが、本番で鏡板は薪によって照らされることになる。「(本番は)まるで予想がつかない」と山口自身も語るこの試み。果たして能の舞とどのような共鳴を見せるのか、一回限りの空間芸術に期待が高まる。 

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「下図で決めすぎると手に負えないので、手が動くように描いてみようと挑んだ」と山口は語る。
横浜能楽堂外ノ芸術祭2016 「赤レンガ薪能」
会期:2016年9月24日 18:00~20:00
会場:横浜赤レンガ倉庫イベント広場 特設舞台
電話番号:045-263-3055
料金:二等席(指定席・雨天時は払い戻し)4000円 / 自由席(雨天時は払い戻し)2000円 ※特等席・一等席は完売
※二等席および自由席はチケットぴあにて購入可能。
URL:http://ynt.yafjp.org/ 

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