「プロ野球選手」を自称し、6年間にわたり東京ヤクルトスワローズの試合を描き続けてきた美術家・ながさわたかひろ。2016年1月23日、2015年シーズンの全試合を描いたイラストをまとめた『プロ野球画報 2015 東京ヤクルトスワローズ全試合』(雷鳥社)が出版されます。同日まで、eitoeiko(東京・神楽坂)にて収録作品の展覧会も開催中。ながさわのコメントと、会場の様子をレポートします。
ながさわたかひろは、プロ野球の試合をイラストで描き続ける美術家。「夢は(絵を描く)選手として球団入りすること」と公言し、2010年から6年にわたって東京ヤクルトスワローズの試合を描いてきました。2010年に《プロ野球画報》で第13回岡本太郎現代芸術賞特別賞を受賞したり、テレビやラジオにも多数出演したりしています。

『プロ野球画報 2015 東京ヤクルトスワローズ全試合』には、スワローズがリーグ優勝を果たした2015年シーズンの152試合すべてを描いた作品が収録されています。イラストは1試合につきB5用紙1枚で、試合のハイライトを中心に記録。ときには、ながさわのその日の出来事も盛り込まれます。
2011年シーズンまでは、版画で「プロ野球画報」シリーズを制作し、選手に作品をプレゼントすることもあったというながさわ。しかし、「チームの勝利に結びついている実感がない」と感じたことから、手法を再考。小さな子どもでも真似でき、選手にも喜ばれる作品を目指して、2012年シーズンからはペンと色鉛筆を使ったオールカラーの作品を制作しています。

ながさわにとって、作品制作は「応援」。イラストを描くことは、自分なりのやり方でチームを応援する姿勢を示すことでもあると言います。目指すのは、誰もが自分なりのやり方でチームを応援できる環境。目標だった「選手」としての球団入りはかなわなかったものの、夢に見てきた胴上げの瞬間を描くことができた2015年、「応援は力になる」と確信できたと語ります。
過去には『美術手帖』にて、有名人をモチーフに作品を制作し、本人に会いに行く企画「に、褒められたくて」を連載。実在の人物を描くことにこだわるのは、自らにとっての作品制作がコミュニケーションの手段でもあるからだと言います。

本書は、『プロ野球画報』(ぴあ、2014年)に続く第2弾。自身の活動の記録でもあり、6年間の活動の集大成です。リーグ優勝を描き、活動に一区切りをつけたというながさわは「(プロ野球ファンはもちろん、)美術の作品集としても楽しんでほしい」とPRしていました。
発行:雷鳥社
定価:本体価格 1600円+税
発行:2016年1月
会場:eitoeiko
住所:東京都新宿区矢来町32-2
開場時間:12:00〜19:00
休廊:日、月曜
近年は、他の作品を描きたい気持ちをセーブして、「プロ野球画報」シリーズの制作に集中していたというながさわ。これからの活動にも注目が集まります。
(取材・文=近江ひかり)